こんにちは。今日は、交通事故被害にあわれ後遺障害認定された被害者に収入の減収がない場合、労働能力喪失による逸失利益があると言えるのかについて考えてみたいと思います。
まず、逸失利益とはどういうものでしょうか?
交通事故にあわれた被害者が、けがのため就労できないような状態に陥ったり、また、やむを得ず休業したり時には死亡したりすることがあります。このような場合に被害者の所得が減少または喪失することがありますが、この減少または喪失する所得を逸失利益と言います。そうすると、事故にあわれた被害者の収入の減少がない場合に労働能力が低下したと言えるのか、逸失利益があるといえるのかが問題になることがあります。
逸失利益の算定方法は、被害者の所得について発生する損害額を査定することになるのですが、その算定は労働能力の低下の程度、収入の変化、将来の収支・転職・失業等の不利益の可能性、日常生活上の不便等を考慮して行われます。
例えば、利き腕の上肢不全麻痺により後遺障害10級が認定された会社事務職員について、事務職という内容からすると直接仕事効率に影響するものであり本人の努力によって減収を免れているにすぎないとして39年間27%の労働能力喪失を認めた判例があります(大阪地判 平成10年12月1日)。
85歳の女性が後遺障害1球3号を残して2年後に死亡した事案で、俳諧傾向を伴う老年期地方の既存傷害を9級10号としたうえで労働能力喪失率は1球と9級との差65%とし賃セ女性学歴系65歳以上の80%である235万800円を基礎とした(京都地判平成14年6月6日)判例があります。
このように、減収がなかったとしても逸失利益がないとは言えないというのが答えになります。
また、失業者についても逸失利益を認めた判例もあります。その場合は、将来の就労可能性が高いことを立証する必要があります。