1.利息の利率は?

(1) 前回は、将来得られるはずだった収入が得られなくなることが見込まれ、その減収分を請求する場合、金額としては、運用利益に相当する分を差し引く必要があることを説明しました。 それでは、差し引かれる額はどれくらいなのでしょうか。

(2) 結論から言うと、裁判所は、民法404条が金銭債権について特に当事者が定めていなければ利息を年5%としていること(法定利率)を根拠に、利息を5%としてその分を差し引くとしています(最高裁平成17年6月14日判決)。
 その理由として、以下のように述べています。

「民法404条において民事法定利率が年5%と定められたのは、民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や法定利率、我が国の一般的な貸付金利を踏まえ、金銭は、通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからである。」
「事案ごとに、また、裁判官ごとに中間利息の控除割合についての判断が区々に分かれることを防ぎ、被害者相互間の公平の確保、損害額の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。上記の諸点に照らすと、損害賠償額の算定に当たり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならないというべきである。」

2.具体的な計算

(1) 判例が上記のような判断をしたことから、実務では利率を5%とすることが定着しています。
 そのため、1年後に得られるはずだった金額を○円とすると、この○円は、現在受け取る額X1に5%の利息を付けた結果ということになります。
 X1×1.05=○円
 したがって、現在受け取る場合の金額は、
 X1=○円÷1.05となります。

(2) では、2年後も同様に○円を得られるはずだった場合、現在受け取ることのできる金額はいくらになるのでしょうか。
 この点については、考え方が分かれうるところですが、実務では基本的に、2年後には、現在受け取った額に1年後に5%の利息で増加したものにさらに5%の利息が付くものと考えます。
 X2×(1.05)2=○円
 そうすると、この分を現在受け取るとすると、金額は、
 X2=○円÷(1.05)2となります。

(3) よって、2年間にわたって、○円の損害が出ることが予想される場合に、その分の支払いを現在受け取る場合の金額は、
   X1+X2=○円÷1.05+○円÷(1.05)2
       =○円×(1÷1.05)+○円×{1÷(1.05)2}
       ≒○円×0.9524+○円×0.9070
       =○円×1.8594です。

 この「1.8594」の部分が、保険会社の出す賠償案に記載されているライプニッツ係数です。
 この数値を用いることで、予想される減収額を元に現在受け取ることのできる金額を計算することができます。
 なお、3年以降も同様に損害ができる場合は、○円をさらに1.05で割ったものを足していきます。

3.民法の改正により利率が変更される可能性

 上記の通り、最高裁は、利率を5%とすべきである理由として、利率の判断について裁判官によって差が出ることを防止するということを挙げていますが、この理由自体は合理的なものであるといえます。
 ただ、現在のような超低金利時代に果たして年5%の運用利益を生み出すことができるのかという問題があります。
 そこで、現在、法定利率を引き下げることが検討されており、中間利息控除の割合も、それに合わせて変更になる可能性があります。

 その場合、例えば、利率が3%となれば、上記計算式の中の「1.05」の部分が「1.03」となり、受け取ることのできる額はその分大きくなります。

弁護士 福留 謙悟