傷害慰謝料はどれくらい払ってもらえるの?

 こんにちは。今日は交通事故で傷害を負った場合の慰謝料について考えてみます。怪我をして痛い思いをしたのだから慰謝料がもらえて当然だと思われるとして、果たしてどのような基準で慰謝料が支払ってもらえるのでしょうか?その基準は怪我の重さ?通院日数でしょうか?

 事故により傷害を負った場合の精神的損害には、傷害による肉体的苦痛はもちろんですが、検査や治療のために入院したり通院することで時間がとられ仕事に遅刻したり、普段していた習い事を休んだりと、行動の自由が制約されるわずらわしさや不利益も含まれるのです。

 そして傷害慰謝料は赤い本によれば「原則として入通院期間を基礎として別表1を使用する」とされ、青本でも「入・通院慰謝料表を基準として上限額と下限額を算出しその範囲内において妥当な金額を決定する」とされているように基本的には入通院期間を基準として算定されます。

 ただ、入通院期間は被害者側の仕事の都合などの事情によって、頻繁に通院できる人と、痛みは激しいのだけれど仕事を休めずどうしても思うように通院できない人がいます。また、病院側の事情で左右されることもありえます。つまり、過剰診療や濃厚診療の問題、加害車両が任意保険に入っていない場合、自賠責の限度を超えると払ってもらえない可能性があるため入院に必要があっても退院させてしまうという打算的な打ち切りの問題もあります。そのため客観性に乏しいといわれています。

 そこで通院頻度などを参考に妥当なものに修正できるように「通院が長期にわたり、かつ不規則である場合は実日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがある」(赤い本)とされています。青本でも「通院が長期化し1年以上にわたりかつ通院頻度は極めて低く1か月に2~3回程度の割合にも達しない場合、あるいは通院は続けているものの治療というよりむしろ検査や治癒経過の観察的色彩が強い場合など」は修正通院期間(通院実日数の3,5倍)を求め妥当な金額を定めればよいと考えられています。(ここにいう「不規則」というのは、通院頻度が治療経過を反映しておらず治療の必要性に疑問がもたれる場合を想定しているため通院頻度が少ない状態を指すのではありません。)

 特に、他覚症状のないむち打ち症の場合、被害者本人の気質的なものや年齢的なもの、被害者意識の強さ、等により入院や通院が長引いている場合もあります。また病院側の事情としても被害者が痛みを訴えている以上拒みにくいという事情があります。そのため、実務では低額な慰謝料を基準とするのが通例です。

 赤い本では別表Ⅰの金額の3分の2程度の基準とされていますし(別表Ⅱを使用するとされています)、青い本でも「下段を基準とするとされています。通院期間についても、赤い本では実治療日数を基準とされています。

 他覚症状のないむち打症のなかには真正なむち打ち症であるのに現代の医療技術で発見することが出来ない場合もあります。しかし、客観証拠による立証が不可能な場合は、実務による現代の控えめな基準によらざるを得ないのです。