労災と自賠責(任意)保険との関係について

 こんにちは。今回は交通事故にあった被害者が労働災害として後遺障害の認定を受けた場合に自賠責保険の方でも後遺障害の認定を受けたケースのお話です。

 

 交通事故にあわれたAさんは、自分にも過失があった(2:8)関係もあり労災から治療費等の支払いを受け てきました。そして労災の方で後遺障害12級との認定を受け、労災先行で支払いを受けました。

 その後、自賠責保険の方でも後遺障害12級との認定を受けました。この場合、任意保険(自賠責保険を含む)からの支払いと、既に受領した労災保険からの支払いとの関係はどのようになるのでしょうか?任意保険から支払われる金額は労災から受領した保険金を控除されるのでしょうか?

2 損益相殺

(1)被害者は、損害賠償の原因と同一の原因によって利益を受けた場合、損害から当該利益を控除される場 合があり、これを損益相殺といいます。労災からの支払いは「利益」として損益相殺されるのかどうかがまずは問題となります。

 労災保険から支払われる給付には、介護保障給付、休業補償給付、傷害補償給付、療養給付、障害年金については「利益」として既に受け取っているものがあれば損益相殺の対象とされます。労災保険から支払われる給付の内特別支給金、同傷害補償給付金については「利益」とはされず損益相殺の対象ではありません。

(2)次に問題となるのは、過失相殺と損益相殺の先後です。当事者双方に過失がある場合、過失相殺した後に損益相殺されるとされています(最判平元、4,11判時1312・97)

(3)そうすると、Aさんの場合、損害総額からまず自分の過失2割分が相殺されます。その後、特別支給金以外に労災保険から既に受け取った保険金が損益相殺として差し引かれその残額が支払われます。

 注意を要するのは休業補償の点です。労災保険は被害者の過失を相殺することはありませんが、休業補償で支払われるのは給与の6割です。

 また労災保険からは慰謝料は支給されない点も注意すべきです。