こんにちは。今回は、物的損害のうちの修理代代車料についてお話ししたいと思います。

 物的損害と聞いて、まず思い浮かべるのは修理費でしょう。修理費は、実際に修理をする前でも加害者側に請求できます。ですから、被害者は、速やかに修理工場で修理見積もりを取られることをお勧めします。

 修理費で問題になるのは、全塗装か部分塗装かという点です。被害者側の方からは、部分塗装といっても完全に元通りになるわけではないので、全塗装をして欲しい、という相談をされることがあります。しかし、残念ながら、実務では、塗装すべき箇所が車の一部にとどまる場合は、部分塗装の代金しか支払われないことが多いようです。これは、損害賠償制度の基本的な考え方が原状回復という点にあるからです。つまり、事故に遭う前の状態(原状)に戻すところまでは認めるものの、それ以上の価値を取得することは認めないという考え方のため、事故に遭う前以上の状態となる全部塗装は否定されることが多くなるのです。 

 では、修理代が車の時価額を上回る場合(「経済全損」といいます。)はどうなるのでしょうか。古い車でも、愛着があり、修理してでも乗り続けたい場合もあるでしょうが、原状回復の観点からは、修理代は認められず、車の時価額が損害額となります。

 車の時価額を調べずに修理をした後で、保険会社から時価額しか支払われないことにならないよう、事故に遭われたら、車の時価額を調べておかれたほうが良いでしょう。

 なお、車の時価額は、レッドブック(オートガイド自動車価格月報)の小売価格より算定されることが多いようですが、まずは、インターネット上の中古車販売のサイトなどを利用されてもよいと思います。

 代車料については、被害車両の修理相当期間や買替相当期間について認められます。示談が成立するまでの全期間について代車料が認められるわけではありません。保険会社と修理をするか否か、または、額について交渉をしていたため修理が遅れたとしても、修理相当期間を超えた期間については代車費用が認めれないことになりますので、ご注意ください。