1.はじめに

 こんにちは、弁護士の辻です。
 交通事故の法律相談をしていると、既に弁護士に依頼することを決めて相談に来られる被害者の方が一定数いらっしゃいます。確かに、交通事故の被害者の方は、多くの場合、弁護士に依頼した方が良い結果を導けるのですが、必ずしもそうというわけではありません。

 本日は、どういう場合に弁護士に依頼すべきなのか、特に費用の面から、簡単にお話ししたいと思います。

2.交通事故の損害賠償と弁護士費用

 交通事故の被害者の方が弁護士に依頼する事件は、加害者側に対する損害賠償請求がほとんどです(まれに被害者参加や後遺障害の申請サポートのみを依頼される方もいますが)。
 ここで気を付けるべきなのは、相手方に法的に請求できる賠償金と、弁護士に依頼する際の費用の見積もりです。
 例えば、弁護士基準であれば相手方に対して100万円を請求できる事件で、相手方保険会社が既に60万円の示談案を出してきていたとして、弁護士に依頼すると弁護士費用が50万かかるという場合、弁護士に依頼して100万円で示談が成立したとしても、被害者の方の手元に残る賠償金は、最初に相手方保険会社が提示した額よりも低くなってしまいます。

 このように、弁護士に依頼することによる経済的利益(増額)が、弁護士費用を下回る場合には、弁護士に依頼すべきとは言い難いです。
 もちろん、お金だけの問題ではないのですが、交通事故の損害賠償は、金銭で行うことが原則ですので(民法722条1項、417条)、どうしても経済的利益のことは考えざるをえません。
 したがって、交通事故の損害賠償を弁護士に依頼すべき場合とは、原則として、弁護士に依頼した場合の経済的利益(増額分)が、弁護士費用を上回る場合と言えるでしょう。
 また、相手方保険会社が示談案を提示した後でなければ、弁護士が入ることによる経済的利益と、弁護士費用とを比べられませんので、治療終了し、相手方保険会社から示談案を出されてからでなければ弁護士を依頼すべきかの判断は付きづらいです。

3.弁護士費用特約保険

 ただ、最近では、交通事故の損害賠償請求に関する弁護士費用を負担してくれる保険が普及してきています。
 この場合には、先ほどと異なり、弁護士費用は、保険で賄えるため、弁護士を入れて増額した分の賠償金は、すべて被害者の方の手元に残ります。
 そのため、弁護士基準以下の賠償案を相手方保険会社から提示されている場合には、弁護士を依頼すべきと言えるでしょう。
 また、経済的利益と弁護士費用を比べる必要はありませんので、相手方保険会社が賠償案を提示する前であっても、煩わしい保険会社とのやり取りを弁護士に一任することもできます。

4.おわりに

 今回は、費用の面から、弁護士に依頼すべきかどうかをお話しさせていただきました。
 弊所では、こういった被害者の方の手元に最終的に残る利益を考慮しながらご相談を受けさせていただいております。
 どうぞお気軽にご相談ください。