1.はじめに

 皆様、こんにちは。
 今日は、損益相殺という問題について検討したいと思います。

 損益相殺とは、不法行為の被害者が、損害を被った反面、その同じ不法行為によって利益を受けた場合に、その利益を控除して損害額を算定することと考えられています。
 交通事故を例にとって考えてみると、加害者側から賠償金を支払ってもらう際に、被害者の方が賠償金とは別に受け取った金銭が賠償金から差し引かれてしまうことがあるというものです。

2.損益相殺の考え方

 損益相殺として被害者の方の賠償金からなぜ控除するのかというと、被害者の方が交通事故を原因として賠償金とは別の利益を受けているような場合、被害者は、加害者からの賠償金を受け取ることで、基本的には、損害が填補されるはずなのに、交通事故によってさらに別の利益を取得することになってしまいます。

 たとえ事故にあった被害者といえども過剰に利益を取得するのはよろしくない、加害者に過剰な負担を負わせるのはよろしくないという公平の理念が根底にあるとされています。

3.どんな金銭でも控除されてしまう?

 ただ、損益相殺として、被害者の方が受け取った金銭が何でもかんでも控除されるかというとそうではありません。

 裁判所は、基本的には、損益相殺に関して、不法行為と同一の原因によって被害者又はその相続人が第三者に対して損害と同質性を有する利益を内容とする債権を取得した場合には、当該債権が現実に履行されたとき又はこれと同視しうる程度にその存続及び履行が確実であるときに限り、これを加害者の賠償すべき損害額から控除すべきである(最高裁大法廷判決平成5年3月24日 民集47・4・3039 参照)、というように考えています。

 そのため、不法行為(交通事故)に遭ったことで、被害者の方が加害者から受け取るべき賠償金とは別の何らかの金銭・利益を取得した場合でも、それが交通事故によって生じた損害と同質性を有する利益でなければ控除されません。

4.最後に

 損益相殺として控除される金銭と控除されない金銭があることは少しご理解いただけたかもしれません。
 もし、交通事故の被害者の方で、賠償金以外に受け取ったお金がある場合、そのお金が後になって賠償額から控除されるのではないか、十分な賠償額が得られるのかということでご心配になった際には、一度、弁護士にご相談していただければと思います。