1 はじめに

 こんにちは、弁護士の辻です。
 今回は、死亡事故の賠償に特有の問題(遷延性意識障害の事案でも、主張されることはありますが。)である生活費控除率について、お話ししたいと思います。

2 生活費控除とは

 被害者が事故により死亡した場合、相手に対して、被害者が得るはずだった収入を死亡逸失利益として請求していくことになります。一方で、被害者が死亡した場合には、得るはずだった収入から支出されるはずの生活費は不要となります。

 そのため、仮に死亡逸失利益として被害者が得るはずだった収入を全額請求できることになると、事故に遭わないまま生存した場合よりも、手元に残る財産が増加することになり、ある意味で被害者側が得をする事態が生じます。

 これを調整するために、裁判所では、支出しなくなった生活費の分だけ、賠償金を控除する立場を採用しており、これを生活費控除などと言ったりします。

3 生活費控除の計算方法(生活費控除率)

 生活費として控除される金額は、具体的証拠に基づき計算する方法や、統計資料を用いる方法もありますが、現在の実務では、損害賠償額を迅速に積算する観点から、類型化・定型化して、被害者の家庭内での立場に対応した基準値を設定し、それに基づき生活費割合を認定して控除する方法が採られています(東京地判平成20年12月24日自保ジャーナル1797号12頁など)。

 この控除する割合のことを、生活費控除率などと呼んでいます。

具体的には、以下の様に定型化されています。

(1) 一家の支柱

① 被扶養者1人   40%
② 被扶養者2人以上 30%

※ 被扶養者の人数による影響
 被扶養者が多い方が、生活費控除率が低いのは、ここでいう生活費とは、被害者個人の生活費が想定されており、家族の生活費は含まれず(最三小昭和43年12月17日集民93号677頁参照)、逆に、家族である被扶養者の存在を、自分の生活費の費消に対する抑制として働くことを考慮して、生活費控除率を減少させる要素としているからです。
 このことは、実際上も、親を失った子供など被扶養者である被害者遺族の生活保障に資するため(※生活費控除率が減少すれば、賠償額は増えるため。),妥当だと考えられます。

(2) 女性(主婦、独身、幼児等を含む)

30%

(3) 男性(独身、幼児等を含む)

50%

5 終わりに

 生活費控除率には、他にも、個別具体的な事情による修正や、得るはずの収入が年金である場合はどう考えるかなど、様々な争点があります。

 ご家族が死亡事故に遭われた方々の心痛は、それだけで察して余りあるものがあります。その心痛の中で、相手方保険会社から賠償に関してこういった話をされるのは、対応に苦慮されることと思います。
 相手方保険会社の言い分に不明な点がある場合や、納得できない点がある場合、誰かに相談したい場合には、いつでも当事務所にご相談ください。