日本を訪れる外国人観光客の増加は、ここ数年目を見張るものがあります。

 2013年は1036万4000人、昨年は1341万4000人にも及んだとのことで(参考:日本政府観光局ホームページ https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/20150120.pdf )、私自身、大阪や東京などの大都市圏はもちろん、日本全国津々浦々の観光地で訪日外国人の方々を本当にたくさん見掛けるようになりました。そのような状況の中、レンタカーを借りてドライブを楽しむ外国人観光客も非常に多くなってきています。

 道を走る数が増えれば、どうしても避けて通れないのが交通事故。総数に比べればまだまだ比率的には圧倒的に少数とはいえ、実際に外国人との間で交通事故に遭ったというケースも散見されるようになってきました。

 さて、外国人の運転する自動車に衝突されたら、私たちはどうすればよいのでしょうか。

 交通事故に起因する損害の賠償は、法律上は相手方運転手に対する不法行為に基づく請求ですから、事故態様・損害等に争いがあり、訴訟等に縺れ込まざるを得なくなったような場面では、運転手が外国人の場合、被害者は当該外国人を相手取って訴訟を提起しなければなりません(準拠法は日本法になります。法の適用に関する通則法17条)。人身傷害の場合は、車両の保有者に対して自賠法上の運行者責任を追及することも考えられますが、物的損害についてはそうもいきませんので、究極は外国人相手に訴訟をしなければならないわけです。

 留学生やビジネスマンなど、日本国内に中長期的な住所を有していればまだしも、単なる観光客などであれば、事故後しばらくすれば本国に帰ってしまいます。そうすると、法律上の請求権を訴訟で具体化しようにも、管轄がどこなのか(どこの裁判所で審理を行うのか)とか、送達をどうやって行うかなど、大変難しい問題が山ほど出てくることとなります。

 外国人観光客が日本国内で運転する自動車はその多くがレンタカーでしょうから、対物対人保険に加入していないことはほとんど考えられないと思います。そうすると、運転者が誰であれ、レンタカー会社が契約した人が運転していて事故を起こしている以上、まずはその自動車に付保されている保険の保険会社が賠償対応をしてくれることになるわけで、上に述べたような法廷論争にまでもつれ込むことはそこまで多くないかもしれません。しかし、言い換えれば、保険会社がきちんとした対応をしてくれない限り、裁判所で争おうにも十二分な訴訟戦略が取れない場合もあるわけで、早い時点からの適切な対応が普通の事案にも増して求められることは間違いありません。

 外国人との間で事故になった。そんなとき、相手方の保険会社の対応に不安を覚えたら、迷わずに弁護士に相談してみてくださいね。