こんにちは。今回は、高次脳機能障害についてお話ししたいと思います。

 交通事故等により、脳に損傷を受け、外見上は治癒しているように見えるのに、脳外傷によって脳の高次機能に障害が残る場合があります。高次脳機能障害が残ると、人格が変化したり、気が散りやすく、新しいことを覚えられない、行動を計画しても実行できない、若しくは実行可能な計画を立てられない、怒りやすい、幼稚になる等の変化が生じます。

 高次脳機能障害が後遺障害として認められるためには、脳室拡大や脳萎縮が撮影された画像所見の有無が重要となります。被害者が成人の場合、通常、事故から数日の間に大きな変化が見られます。その後、緩やかな変化の後、数か月程度で脳室拡大は完成すると言われています。ちなみに、脳外傷直後から6時間以上の意識障害(刺激により開眼しない、昏睡から半昏睡程度を指します)が継続した場合、高次脳機能障害が残ることが多いと言われています。ただし、半昏睡に至らない意識障害が1週間程度続いても障害が残る場合もあります。

 画像上明確な異常所見が見当らない場合は問題となりますが、個人的には、頭部への外傷があり、高次脳機能障害を示す症状があるものの画像上の所見がないという場合は、画像上の所見がないことだけで高次脳機能障害が否定されるのは妥当ではないと考えます。

 また、残存する後遺障害は、認知障害、行動障害、人格変化等画像から直ちに判断できるものではないため、高次脳機能障害の判断資料としては、医師の所見や家族等による日常生活状況報告表も非常に重要なものとなります。

 次に、高次脳機能障害の症状固定時期についてですが、脳室拡大が固定したとしても、高次脳機能障害はリハビリによってある程度改善します。高次脳機能障害の症状固定時期は医師の判断によるところが大きいですが、一般的に事故から1年~2年後となることが多いようです。

 もっとも、乳幼児の場合、脳が発達段階にあり、受傷後も脳が変化していく可能性があること、家庭で保護されている状況下にあり、家庭での影響が大きいことを考慮する必要があるため、適切な経過観察期間、例えば、乳児では幼稚園などで集団生活を開始するまで、幼児では小学校での適応状況を調査し、判断することが必要であると考えられています(「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて」と題する報告書参照)。

 また、高齢者の場合は、就労能力のみならず、必要に応じ事故前を含めた事故後の日常生活状況(特に自立の程度)を調査し、その会社生活適応能力を判断しています(前掲報告書)。