皆さん、こんにちは。
前回、家事代替労働力のための支出について見ました。主婦が休業した場合の代替労働のための支出については、①職業的な者を雇入れる場合、②親族、知人等の非職業的な者に依頼して謝礼を支払う場合いずれについても、その必要性が認められれば、賃金又は謝礼について、原則として休業損害として認められます。
今回は、事業所得者が自ら働けないためその代わりに他の労働者を雇用した場合や派遣労働者の提供を受けた場合、いわゆる代替労働力の確保に費用を支出した場合について見てみたいと思います。
事故による通院期間中に自己の代わりに雇用した者の人件費などについても、その必要性が認められれば、交通事故と相当因果関係のある損害として認められます(大阪地判平成11年8月31日、横浜地判平成15年3月7日、名古屋地判平成16年9月15日など)。
事業所得者の休業損害の算定は、基本的には、得られたはずの売上額からこれを得るために必要としたはずの原価と経費を差し引いてなされます。
代替労働力の確保に要した支出をもって損害とする方法は、上記のような事業所得者の原則的な休業損害の算定方法に比べると、実損害的な算定となります。完全な休業ではなく不完全ながら営業していた事例などで有益な算定方法と考えられます。
裁判例としては、新聞販売店舗経営につき、事故のため被害者が新聞配達を行えなかった期間について代行の新聞配達要員に支払った派遣費用を認めた事例や一人で開業している歯科医師につき、1人で全患者に対する診療行為をできなくなった場合に、一部代診を依頼した医師に対する代診の費用約335万円を認めた事例などがあります。
弁護士 髙井健一