相続対策における生命保険の活用法について、今回は基本に立ち戻り相続税の納税資金対策についてお話しします。
まず、前提として、相続人間で争いが生じた(いわゆる争族)場合や、相続人の誰かと疎遠である場合や、認識していない相続人がいた場合(隠し子等)等、被相続人名義の預貯金口座が凍結され解約・出金できない場合があります。
これは、相続が生じた場合、被相続人名義の預貯金を出金するには、金融機関から被相続人の生まれてから死ぬまでのすべての戸籍謄本だけでなく、さらに相続人全員の戸籍謄本、実印による押印、印鑑登録証明書の提出が必要となるからです。
先ほど述べた、相続人間で争いが生じた場合、相続人の誰かと疎遠である場合、認識していない相続人がいた場合には、相続人全員の実印による押印と印鑑登録証明書を集めることが困難となることが多々あり、この場合、通常被相続人名義の預貯金口座を解約出金することができません。
これらの場合、金融機関が預貯金の解約・出金に応じてくれず、被相続人の預貯金を納税資金としてあてにしていた場合、その金員を事実上利用できなくなります。
しかしながら、生命保険をかけていれば、比較的迅速に保険金を手にすることができ、このような心配はいりません。
本連載で何度も繰り返しになりますが、被相続人が亡くなると、保険金は、指定された者の固有の財産となります。
そのため、生命保険金の受け取りには、被相続人の生まれてから死ぬまでのすべての戸籍謄本、さらに相続人全員の戸籍謄本、実印による押印、印鑑登録証明書の提出が必要となりません(被相続人が亡くなったことが分かる資料、死亡診断書等は必要となります)。
このことから、確実に納税資金として準備することができるのです。
したがって、相続税の納税資金対策等として、相続財産の一部を生命保険で準備しておくのは重要だと思います。
被相続人が相続人のために多くの預貯金を残してくれていたとしても、実際に亡くなった際、残された相続人が速やかにその資産を使えるようにしておかなければ、結局は相続により相続人が経済的に困窮してしまうことが考えられます。
実際にも被相続人が亡くなったことにより金融機関が被相続人名義の預貯金口座を凍結し、葬儀費用すら出せない、生活費の引き出しができず相続人の生活が維持できないというご相談はよくあります。
このようなことにならないために、当面のお金を迅速に準備できるよう相続財産の一部を生命保険にしておくことは重要です。
なお、ご存知の方も多くいらっしゃいますが生命保険には非課税枠が存在します。そのため、生命保険は相族税対策として有効です。この点については、次回お話しします。