1.世の中、紛争の解決や事故の権利の実現を図る方法は、裁判以外にもあります。その一つとして、支払督促というものがあります(民訴法382条-402条)。

2.支払督促は、金銭の回収において用いることができます。申立ては、相手方住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対して行います。手続きは書類審査のみで行われ、証拠の添付や裁判所への出頭は不要です。申立の手数料は、訴訟の時の半額となります。
支払督促が出されると、相手方の異議申立期間経過後30日以内に、申立人は仮執行の宣言の申立てをしなければなりません。仮執行宣言が付されると、強制執行が可能となります。
簡便、安価がこの手続の特長です。

3.ただ、この手続きは、相手方に、①支払督促の送達を受けたとき、②仮執行の宣言を付した支払督促の送達を受けたときの2度、督促異議の申立ての機会があります。督促異議の申立ては、支払督促を受け取った日の翌日から2週間です。相手方が督促異議を申し立てれば、通常の訴訟に移行することとなります。(②の場合、執行の停止は別途申立てが必要です。)手数料も、改めて差額分を追納しなければなりませんし、管轄の裁判所は支払督促の申立てを行なった裁判所のままとなります。

督促異議の申立てをされた場合には、支払督促の手続きをとった分だけ単純に時間のロスとなり、相手方住所地近くの裁判所まで出向かなければならない難点はあります。相手方が異議を申し立てそうならば、最初から自分の都合のいい裁判所に訴訟を申し立てた方が効率的でしょう。そうでなさそうなら、この手続きの簡便さを選ぶのも一手です。