こんにちは。年末も目前、休みが恋しい時期ですね。
 本日は、民事保全の際に納めなければならない担保金についてお話ししようと思います。

 まず、民事保全というのはどういうものかというと、訴訟などで本題の請求をするとなると、通常、結論(判決)が出るまで年単位の時間がかかります。そうなると、訴訟を提起したときには、将来的に勝訴したときに被告が判決で命じられた内容の経済力があると思っていても、判決時になってふたを開けてみると被告の経済状態が悪化していて判決の内容を実行できなくなってしまっていた、というリスクを負うことになります。そのようなリスクを避けるために「保全」という手続きがあるのです。例えば、預金を仮差押えしたり、自動車などの物を仮差押えしたりといったことです。

 しかしながら、この「保全」手続きは、保全を受ける側としては迷惑をこうむる可能性があります。そこで「保全」手続きをしようとする人は、担保金を納めなければなりません。つまり、将来的に、訴訟によって原告が敗訴した場合、仮差押えを受けていたことによって生じる損害を、この担保金が担保するという関係にあります。担保金の金額は裁判所が決めるのですが、そこそこまとまった額になることが多いので、予算の関係上、保全を躊躇させる要因になることもあります。

 さて、担保金もおさめて保全が執行されて、さらに本題の訴訟でも勝訴したという場合、担保金はどうなるのでしょうか。もともと担保金は、被告が原告に対して損害賠償請求する場合の担保だったので、勝訴したのなら担保金を納めておく意味がなくなります。そのため、当然、納めた原告に返金されるはずなのですが、意外とこの手続きには時間がかかります。勝訴判決確定に基づいて担保の取消し(返金手続き)がなされる場合、1ヶ月くらいかかります。

 これが早くなる場合はあります。つまり、担保を取消すことについて被告の同意がある場合です。もともと被告のための担保だったのだから、被告の同意があれば取消せるのは自然な流れですね。この場合、数日~5日程度で担保金が返金されます。

 さて、原告が敗訴してしまった場合はどうなるのでしょうか。この場合も、担保金の返金を受けられることがあります。ただ、敗訴してしまっているので、被告が損害賠償請求する気があるのかどうかによって変わってきます。原告が敗訴して被告が損害賠償請求できる可能性があるにも関わらず被告が何も行動を起こさない(損害賠償請求訴訟をしない)となると、原告はいつまで待っていればいいのか?ということになります。そこで、敗訴した原告は被告に対し、「権利(損害賠償請求の)を行使するんだったら早くやってくれ」と催促することになります(権利行使催告)。2~3週間程度の猶予期間を置いても被告がなにもしないとなってやっと、原告が担保金の返金を受けることができることになります。この手続きに2カ月くらいはかかります。

 こう見てみると、運よく被告が同意してくれれば担保金は早く返金されますが、基本的には担保金の返金には時間がかかるということです。
 保全をして安心を得るのはよいのですが、ぎりぎりの経済状況で担保金を積むというのはよく考えてからのほうがよいですね。