こんにちは。桜がきれいに咲いて、気持ちのいい季節ですね。
さて、本日は、「保全」という手続きに関するお話をしたいと思います。

「保全」という手続きは、訴訟や審判など(「本案」といいます。)において求める内容を実現できるように、本案とは別に行っておく手続きです。例えば、貸付金返還請求が本来の目的で、これは訴訟で請求するとしても、訴訟で「●●円支払え」という判決をもらったところで、その時点で相手方が自分の財産を処分してしまっていては、せっかくもらった判決を実現するアテがなくなってしまいます。そこで事前に、相手方が財産を処分してしまわないように、現状を固定する「保全」の手続きをすることになるのです。

この保全の対象となる財産は、相手方の預金債権、不動産、自動車などいろいろあります。それぞれ保全の方法が異なり、預金債権であれば、預金先の金融機関に対して相手方に払い戻しをしないように求めることになるでしょうし、不動産であれば処分禁止が登記されます。また、自動車などの物は現物を取り上げて保管するという方法があります。

しかしこのような保全を安易に許してしまうと、保全を受けた相手方としては財産の処分ができなくなって困ってしまいます(ただ、困ってしまった相手が任意に払うことを期待する、という側面もあります。)。場合によっては、財産を仮に差し押さえられたせいで、営業活動に支障が出て損害が発生するということもあり得ます。保全を受けた側としては、もしもその本案の請求が不当なものだったら、「不当な請求のせいで損害を被った。たまったもんじゃない。」となってしまいます。
もちろん、相手方が財産を処分してしまう可能性があるなど、保全の必要性がある場合にのみ認められる手続きであって、どういう場合でも認められるわけではありません。
そして、保全を申し立てる場合、申立人は「担保」を立てなければならないということになっています。担保は敗訴した場合に相手方に対する損害賠償に充てられることが予定されているものです。

しかし勝訴した場合は、必要な保全をしたということになりますので、保全によって相手方に何らかの損害が生じていたとしても、申立人がその損害を賠償する必要はありません。したがって、勝訴した場合は担保として納めたものは申立人の下に戻ってきます。
この担保金額ですが、そこそこ高額になっています。裁判官の裁量で決められ、保全の対象の財産の2~3割程度になることが多いようです。相手方への損害賠償のためのものなのですから、高額になるのもやむを得ないところです。また、もしも担保金額が低くてもよいということになれば、保全の申し立てが濫用されかねません。
そして担保は、裁判官に決定されてから、約1週間以内に供託しなければなりません。担保が期限内に供託されないと、保全命令の申し立てが却下されてしまいます。

このように、担保は、保全において、申し立てる側にとっても、相手方にとっても重要な意味を持っています。申立人にとっては、回収可能性を高めるためにはやっておいた方がよい手続きですが、勝訴の可能性と担保の負担を比較検討する必要がありますね。