通常の保証は、保証の対象となる特定の法律関係が基盤にあります。通常、その法律関係は発生日や範囲が特定された債権債務関係であり、したがって保証人は自分が何について保証の責任を負うことになり、生じる責任はどの程度となるかを予め把握することができます。例えば、「○年×月△日にAさんがBさんから借りた100万円の借金についてCさんが保証人になる」ということでしたら、Cさんの負う保証人としての責任の範囲は100万円の返還債務とそれに関する利息や遅延損害金などになるということです。

この場合、Cさんは、Aさんが保証対象の100万円を返済すれば保証人の責任がなくなり、別の日にBさんから借りたお金などについてまでは責任を負いません。

しかし、世の中には、「一定期間の間に継続的に発生する、一定範囲内の不特定債務」をまとめて担保する保証があります。根保証(継続的保証)と呼ばれるものです。これは、継続的に多数の債権債務関係が発生し得るような法律関係について、一々個別に保証契約を行なうのでは煩雑に過ぎる、ということから設けられているものです。

根保証契約は、継続的な売買・銀行融資等の取引から生じる不特定の債務の保証(信用保証)、不動産賃貸借における賃借人の債務の保証(賃貸借保証)、被用者が使用者へ損害を与えた際の補てんについての保証(身元保証)という3つの類型があります。

信用保証の例としては、「A社とB社との間で結ぶ工業部品供給契約(本件契約)について、CさんがA社の本件契約の債務について保証人となる」といった感じになります。この場合、Cさんは、本件契約より生じるA社の債務について、保証人としての責任を負うこととなります。根保証なので、保証契約期間中は、債務の元本の確定がなされない限り、「一つの債務を弁済しても、本件契約からまた新たに債務が発生すれば、それについて責任を負う」仕組みとなり、結果的に支払いが過大になる危険性をはらみます。

根保証契約は、当初の予想もしていなかった事情が発生する可能性があり、責任が過大になることがあります。特に個人にとっては危険性が高く、個人保証としての根保証契約にはこれまで立法的手当てがなされることがありました。

身元保証については、身元保証に関する法律(身元保証法)による規制を受け、保証期間は最長5年、被用者の任務・任地の変更や業務上不適任・不誠実とみられる事情がある場合の保証人への通知義務、通知を受けた保証人の解約権を定めています。また、保証責任の限度を定めるにつき、裁判所に広い裁量権を与え、保証人の責任が過度に重く認定されないようにしています。

信用保証については、そのうちの貸金債務と手形割引による債務を保証するもの(貸金等根保証)について、平成17年4月1日より民法465条の2以下が施行されています。それにより、貸金等根保証においては、保証人の責任の限度(極度額)を定めなければならず、最長5年までに債務の元本の確定期日を定めなければなりません。また、債権者や保証人につき強制執行や破産手続き開始の申し立てがあれば、その時点で債務の元本は確定となります。これらの保護は、法人保証としての貸金等根保証の場合の求償権についての保証人に対しても適用があります。このように、貸金等根保証には保証人保護の手当てが取られています。

しかし、これらの規定は、現状、貸金等債務を含む根保証としての信用保証のみを対象としています。貸金等債務が含まれない根保証については、今のところ上記のような制限に服さずとも効力は失われません。現在行われている債権法改正では、この点すべての根保証に対象範囲を広げるべきとする意見も出ているようですが、今はそのような保護はありません。
なお、元本債務が確定すれば、確定時の債務残高についての通常の保証となるので、それを弁済すれば責任が果たせます。

賃貸借保証については、主たる債務が主として賃料債務であり、保証責任の範囲や増減に予測がたつため、さほど保護の手当ては厚くありません。
なお、賃貸借保証については、対象の賃貸借契約が更新された後も存続するのが原則です(最判平成9年11月13日)。

保証人保護のための手当てが講じられているとはいえ、個人で根保証の保証人になることは危険が大きいです。誰かに保証人を頼まれた際、保証契約書を見て根保証と思われる形態となっている場合(表題に「根保証」の文字がある、「極度額」や「保証期間」の定めがある、保証対象が銀行からの融資だったり「~取引から生じる一切の債権」だったりする、などが目印)、より一層の注意を払った方がいいでしょう。