弁護士法人ALG 東京本部弁護士の関です。

相手が行方不明なので紛争を解決できない…

皆様は、もし、誰かに対して訴訟を起こしたいのに、その相手が行方不明だったら、どうしますか。
例えば、もう何年も配偶者と別居しており、裁判をしてでも離婚したいが、どこに住んでいるか、全くわからない場合などです。

裁判をするには、原則として、訴状が相手方に送達されることが必要ですが、そもそも相手方の居場所がわからない場合、送達ができないから裁判はできない、というのでは、紛争が全く解決できないことになってしまいます。

そのような時のために利用できる公示送達とは?

そのような時のために、「公示送達」の制度を利用して、訴状が相手方に送達されたものとみなすことができます。
訴状が送達されたとみなされれば、実際に口頭弁論期日が決まります。もちろん、相手方が所在不明ですから、裁判に出席するのは、原告(と代理人)だけですし、尋問の手続きも、原告についてだけ、なされます。
そして、判決が出れば、これも「公示送達」によって、相手方に送達されたと見なされ、然るべき期間の経過後、確定するのです。

行方不明でも裁判をするメリット

ここで、相手方が行方不明なのに、裁判なんかするメリットがあるのか、不思議に思う方もいるでしょう。
確かに、相手方は、訴訟を提起されたことも、判決が出たことも、普通は知ることはありません。原告だけが出廷して行われる裁判というのも、見ていて奇妙な感じがします。
しかし、この制度があるから、長い間配偶者が行方不明でも離婚ができ、新たな人生をスタートさせることができることになります。
また、貸金業を営んでいる人が貸したお金の返還請求権は、5年で時効により消滅しますが、貸した相手が行方不明になった場合でも、公示送達を利用して裁判をし、判決を得ておけば、消滅時効の期間が10年に伸びますので、判決が確定してから10年の間に相手方が見つかれば、お金を返してもらえる可能性が出てくるのです。

ただ、公示送達を利用した訴訟を提起するには、相当しっかりと、相手方が所在不明であることを調査し、裁判所に報告しなければなりません。
私も、公示送達を利用した訴訟の代理人をいくつかつとめたことがありますが、相手方が最後に住んでいた住所を尋ね、現在は空き屋であることを水道のメーターなどで確かめ、写真を撮ったり、管理人さんに話を聞くなどして報告書の形にし、裁判所に提出する等、結構な労力がかかりました。
相手方が、どこにいるかはわからないが、既に日本を出国していることが確実な場合は、弁護士会から入国管理局に照会をかけ、相手方の出入国履歴を取り寄せれば、「日本にはいない」ということ自体の証明は、できます。

相手が外国人だった場合の道のり

しかし、それだけでは裁判所は納得しないことも多く、相手方が外国人の場合、日本に在留するためのビザを取得する時に、海外における住所を書くことになっていますので、そこにもいないのかということまで調査するよう求められることがあります。 そうなると、こちらからその住所に手紙を出して返事を待つ必要が出てきたりして、さらに費用や時間がかかります。万一、その住所に相手方がいることがわかれば、もう公示送達を利用することはできません。
そうなると、その住所にあてて、海外送達の方法で訴状を送ることになるのですが、訴状の翻訳が必要となりますし、国によって違いますが、送達だけで数ヶ月(場合によっては数年!)かかることも珍しくありません。
相手方の所在が判明したらしたで、かえってこのように手続が煩雑化する場合もあるのです(海外送達に関しては、他にも難しい問題があるのですが、それは機会があれば書いてみたいと思います)。 
話がそれましたが、とにかく、公示送達を利用した裁判をするには、実は、この相手方の所在調査の段階で、結構な費用、時間、労力がかかることが多く、裁判開始までたどりつくには、長い道のりとなっているのです。

ぜひ弁護士にご相談ください

しかし、「判決を得る」ということには、既に述べたようにメリットもありますので、お悩みの方は、是非一度ご相談下さい。
相手方の所在調査も、ご自身だけでは限界がある場合も多いでしょう。この点、当事務所では、調査についても色々と有用なアドバイスをさせていただくことができると自負しておりますので、是非ご利用下さい。