前回の続きです。今回は、前回の最後で述べた土地の登記上の境目を明らかにする方法のうち、筆界特定制度について触れようと思います。
筆界特定制度の概要は、法務省のHPにも説明があります。隣地との登記上の境目の位置が不明、または争いがある場合に、土地の所有者などが法務局の筆界特定登記官に申請を行なうことで、同制度を問題の解決に利用することができるとのことです。不動産登記法が、同制度を規定しています。
手続きの大まかな流れとしては、申請を受けた筆界特定登記官が筆界調査委員(土地家屋調査士のような専門的な知識・技量や経験を有する民間人から選ばれるようです。)を選任し、筆界調査委員が現地調査や測量、関係者からの事実聴取、その他資料の精査などを行います。筆界特定登記官は、関係者からの意見聴取を行ないます。その後筆界調査委員が意見書をまとめて筆界特定登記官に提出し、それを踏まえて筆界特定登記官が筆界の特定を行い、結果を筆界特定書にまとめて交付、公告します。
この制度のメリットとしては、迅速、安価、隣地の関係者との感情的摩擦を引き起こしにくい、専門家が関与するので結果の信頼性が高い、仮にここで話がまとまらなくても筆界特定書は以後の手続きで資料とできる、などがあげられるようです。
一方、デメリットとしては、この制度での筆界特定結果が最終結論となるわけではなく、隣地の関係者に不服が残った場合には境界確定訴訟に移行することができるため、最終解決に対する絶対的な期待までは持てないことでしょう。また、筆界の特定は公的な要請であり、結論は双方の主張範囲に拘束されないため、「相手の主張する境目よりも、さらに自分に不利な位置で特定されてしまう」可能性があることなども挙げられるでしょう。(もっとも、双方の主張に拘束されないとの点は境界確定訴訟も同じですが。)
あと、前回にも述べていますが、この制度はあくまで「土地の登記上の境目を明らかにする」ものであり、所有権の範囲の確定まで直接の効果として持つものでないことには注意が必要です。所有権の範囲は、それ自体別途定めなければならず、ただ登記範囲を定めることがそれに資する場合が多いだろうということです。