こんにちは。暑くなってきましたね。

 本日は 弁護士が事実を調査したり資料を収集したりする手続きについてお話ししようと思います。

 相談者の中には、弁護士は何でも調査する権限があると思っている方がいます。たしかに、弁護士ということで特別に認められている権利がありますが、何でも、というわけにはいきません。

 まずは相手方や関係者の戸籍や住民票の調査。これは基本的なものです。ただし、相手方がDVやストーカーの被害に遭った、として開示を制限するように求めている場合は、開示してもらえないこともあります。

 次に、弁護士会照会という手段があります。弁護士会照会というのは、弁護士会を通じて、関係各所に対して事実関係を問い合わせたり、資料の提供を求めたりするものです。電話会社に対して、対象の電話番号からその使用者の住所を調べたり、金融機関に対して取引履歴の調査を求めたり、といったものから、ホテルの宿泊履歴の開示を求めたり、といったものまでさまざまです。依頼案件と関連性があり、必要性があるかどうか審査されますが、わりと柔軟にいろいろな調査をすることができます。調査内容や、調査先によっては、「電話で任意に回答はできませんが、弁護士会照会なら回答できますよ」と言われることもありますので、そういう場合に弁護士会照会を利用します。

 そのほかに、訴訟など裁判所の手続きをとっている場合は、調査嘱託や文書送付嘱託といった手段があります。これらは、裁判所を介して調査先に問い合わせをするという手続です。これも、調査内容は比較的柔軟です。これらの手続きをとるかどうかは、裁判所の判断になります。

 弁護士会照会も調査嘱託等も、最近は、個人情報保護を理由に開示されないことが多い(特に金融機関など)のが難点です。

 さて、弁護士会照会と調査嘱託等の裁判所の手続きのどちらをとるのがよいのか、ということを悩むことがあります。どちらでも調査可能な場合に、慎重になるべきは、裁判所の手続きを利用するなら、相手方にも調査内容と回答が知られてしまうということです。したがって、調査結果が自分に不利な内容になるリスクのあるものは、なるべく弁護士会照会で調査したいところです。ただし、弁護士会照会は、一定の費用がかかります。 また、「弁護士会照会では回答しませんが、調査嘱託なら回答しますよ」ということもありますので、調査嘱託をやむなく選択するということになりますが…回答が返ってくるまで冷や冷やすることもあります。不利な回答が来ないように、質問の立て方には神経を使います。

 できるだけ弁護士会照会で調査を水面下で進め、有利なものだけ表に出したいところですが、そうはいかずにジレンマを感じるのです。