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ペットは、日本の法律上は物として扱われるので、飼い主の財産の一つです。そして、交通事故により、飼い主の財産を侵害しているので、事故の相手方に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。また、一定の事情がある場合には、ペットの死亡により飼い主が受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求することもできます。

1、不法行為に基づく損害賠償請求はできるのか(民法709条)

 ペットは、日本の法律上権利の主体ではないので、法的には飼い主の財産として扱われます。
 そして、ペットが死亡した場合には飼い主の財産権を侵害したといえるので、事故の相手方に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することができます。そして、この場合の「損害」の範囲ですが、損害の範囲が無限に広がらないよう、社会通念上、交通事故と相当因果関係のある損害に限られます。
 また、損害賠償請求は、金銭の支払いによって交通事故が起こる前の状態に回復させる制度であるので、交通事故当時のペットの客観的価値すなわち市場価格が賠償の内容となります。そのため、交通事故当時の価値が、ペットの購入価格よりも下回る場合には、購入代金全額を請求することはできません。

2、慰謝料は請求できるのか(民法710条)

 交通事故によりペットが死亡してしまったとしても、ペットは法律上物であるので、物損事故として扱われます。
 物損事故の場合、財産的損害の賠償がされれば、精神的苦痛も慰謝されるので、原則的には慰謝料を請求することはできません。これは、財産的損害が賠償されれば、精神的苦痛も賠償されることになると考えられているからです。
 しかし、ペットは、命があるし家族の一員であり、ペットが死亡すれば飼い主には大きな精神的ダメージを与えるため、通常の物損事故とは異なり、財産的損害が賠償されたからと言って精神的苦痛まで回復されるとは言えません。
 そこで、愛情の程度や死亡に至る経緯等を考慮し、一定の場合には慰謝料も認められます。ペットが死亡してしまった場合には、慰謝料請求が認められることが多いようです。