みなさまこんにちは。新年度が始まってもう半月経ちましたね。早いものです。
 さて、本日は、前回お話しした、「配当」に関連した話をします。
 (前回の記事はこちら:「債権執行における供託と配当」

 配当というのは、第三債務者が供託した金銭から債権者が金銭の分配を受ける手続きなのですが、そもそも、このような分配が必要になるのはなぜかというと、一つの差押え対象の財産(債権)に対して、複数の債権の執行等がかかっていたりするためです。債務者の資力が乏しいと、複数の執行が一つの財産にかかっていくということはありえることです。

 先日、債務者が供託した仮差押え解放金の取戻し請求権に対して、債権差押の執行をしました。すると、第三債務者である法務局が、「当該請求権について、別に仮差押えがなされているから、弁済できない。配当手続きが必要になる。」と言いました。実は、ここで法務局が言っている仮差押えというのは、この度行った債権差押の債務名義となった事件を本案とするものでした。

 通常は、仮差押え→本案を債務名義とする本差押えであれば、配当手続きを経ずそのまま弁済されることもあります。しかしこの件においては、いくつか特徴があったのが、配当手続が入ってしまった理由でした。その特徴の一つというのは、仮差押えと本差押えの債権者が異なっていた(相続などがあり権利関係が少々複雑になっていました。)という点です。異なっていたといっても、本案は、債権者が複数名おり、仮差押えの債権者は本差押えの債権者の一部だったので、全く異なるわけではないのですが…。また、仮差押えの対象が、もともとの仮差押え対象物から仮差押解放金に変容していたのも、特徴の一つでした。

 結局、法務局の立場からすれば、仮差押えと本差押えが一見して同一の事案とは判断できず、両者が競合しているような外観になってしまったのです。

 仮差押えも本差押えも、同じ事案を対象にしていたのに、概念的には、二つが両立しているという妙な状況が存在することになってしまいました。

 なお、このような場合、配当手続きにおいては、仮差押えのほうを取下げると、円滑に手続きを進めることができる、というのが裁判所の見解です。

 仮差押え(仮執行)→本差押え(本執行)の間には、長期間かかりますから、その間に事情が変化して、執行がすんなりいかなくなることもあるというのは、意識しておいた方がよいかもしれません。