こんにちは。多くの方は夏休みも終わり、リフレッシュしたところでしょうか。
さて、先日、子供用食器に触れる機会があり、軽くて丈夫そうで素敵だなあと感じたことがありました。そこで思い出した裁判例がありますのでそれに触れてみようと思います。
その裁判例というのは、小学2年生の児童が学校給食用食器を落としてしまい、その食器が割れて破片が目に入り、目に傷害を負ったという事案です(奈良地判平成15年10月8日)。
その食器というのは「コレール」という材質でできており、「コレール」は強度が高く割れにくいという特性を持っていました。ところがいったん割れた場合には、細かく鋭利な破片が広範囲に飛散するという危険性も持っている物でした。
この事例においては、製造物責任法3条にいう欠陥があるかどうかが争われました。
製造物責任法3条にいう欠陥には、「設計上の欠陥」や「指示・警告上の欠陥」というものがあると考えられています。設計上の欠陥は、製造物が設計段階から製造物がもつ通常有する安全性を備えていないことを指します。また、指示・警告上の欠陥というのは、製造物が持つ危険性に関する説明や指示・警告が十分でなく、安全性を欠いていることを言います。
この事例においては、「設計上の欠陥」については、割れにくさという有用性と危険性が表裏一体であることを指摘して、割れたときの危険性をもって直ちに設計上の欠陥があるとは評価できないと判断されました。
しかし、「指示・警告上の欠陥」はあると判断されました。どうしてかというと、「丈夫で割れにくい」という点を特長として強調しているのだから、それと表裏一体をなす危険性も記載して、消費者が、危険性を認識したうえで商品を購入できるように、また、破損による危険性を踏まえて使用方法について警告をする必要があると考えられたためです。
たしかに消費者としては、良い面だけを見て商品を購入しがちですよね。でも、商品に指示や警告がきちんとあれば、危険性がある商品だと認識して、購入を控えたり、購入することにしたとしても取扱に注意したり、といった選択をすることができます。とくにこの事案のような学校給食用食器は、小さい子どもたちが使うので、誤って落としたりすることは日常茶飯事ですから、危険性があるなら選択しないという判断もできるようになります。
ただ、この件に出てきた食器といった日用品で、どれだけ「使用上の注意」の紙を真面目に読むのか…。でもこのように、「指示・警告」がなされていると、製造物の欠陥がないという判断になることもあるということは、何かが起きても自己責任、ということです。そうと知れば、今後はちょっとした物についても、「使用上の注意」を読もうという気持ちになるかもしれませんね。