こんにちは。雨続きで寒いですね。早くも秋が来たのでしょうか。
 さて、本日も前回に引き続き、製造物責任のお話しです。今日は、製造物責任を負わせるべき「製造業者」にまつわるお話をしようと思います。
 (前回の記事はこちら:製造物責任~使用上の注意はよく読もう

 さて、物の「製造業者」が誰(会社)なのか、ということを考えたことがあるでしょうか。普段から使っている物でも、製造業者が誰なのかと尋ねられて、微妙によくわからないものもあったりします。例えば最近よくあるのが、プライベートブランドの商品。これは、大手スーパーやコンビニのブランド名で売られていますが、実際に作っているのはスーパーではなく、別の業者だったりします。プライベートブランドではなくても、消費者と直接かかわりをもつ販売店自身が、その商品の製造について大きなかかわりを持っていることもあります。

 製造物責任を問う場合は、誰を相手にして責任を問うべきなのか、を考えざるを得ません。責任を問う相手を間違えると、請求が認められないこともあり得るので、慎重に判断しなければならないのです。

 例えば、こんな裁判例があります(東京地裁平成17年3月24日判決,東京高裁平成18年8月31日判決)。大手小売店が輸入業者から電気ストーブを大量に仕入れて販売していたところ、その電気ストーブが有害化学物質を生じさせたため、使用していた人が中枢神経機能障害等にかかったという事案です。この事案においては、大手小売店が製造物責任法3条3項1号にいう「輸入した者」つまり輸入業者といえるかが争われました(製造物責任法3条3項1号に基づき、「輸入した者」も「製造業者等」となります)。

 小売業者は、普通に考えると、商品を売るのが本業で、「輸入」はしていないのではないかと思いますよね。この事案で、原告は、輸入業者Aは中国の製造業者の単なる出先機関にすぎず、小売り業者が輸入業者にあたると主張しましたが、結局は、この判決も、小売業者は「輸入業者ではない(製造業者等ではない)」という判断をしたのです。しかし、この事案においては、高裁において、小売業者と言っても大手で、その輸入業者Aの輸入した電気ストーブの全販売台数の3分の1を超える台数を販売しており、安全性について一定の確認義務を負うと判断されました。この件では、同型の電気ストーブから異臭がすると問い合わせがあることを認識した時期で、危険性を予見して検査確認し、健康被害が生じないように措置をとる義務があったと認定して、小売り業者に「製造物責任法」に基づく責任ではなく、一般の不法行為責任を認めました。

 このように、「製造業者」が誰かということを考えるとともに、責任を問う理論建ても変わってきます。この件では、製造物責任法ではなくても、小売業者に責任が認められたからよかったものの、製造、流通、小売りが複雑になってきている現代、誰を相手に請求するのかを判断するのが難しいと感じますね。