こんにちは。暑い日が続きますね。
本日は、前回に引き続き、保全・執行手続きの関係なのですが、その中でも投資信託の差押えについてお話ししようと思います。
金融資産の差押えと言えば、まず思いつくのが預金債権の差押えです。
預金債権であれば多くの人が持っていますから、まず、差押えをしようとするなら預金債権がねらい目だと判断できるからです。
しかし、昨今、預金に限らず様々な金融資産があり、預金債権だけを狙っていてもそれは相手方の持っている財産のほんの一部にしか過ぎないということもあります。
最近よくみる金融資産が投資信託です。投資信託は、投資信託運用会社が作り、販売会社を通じて投資家に販売され、多数の投資家から集められた金銭を、資産管理を専門とする信託銀行に保管してもらい、投資信託運用会社が信託銀行に指図して運用します。
このように、投資信託は、複数の投資家が集めた金銭を集めて運用するというところに特徴があり、預金債権のように、個々の投資家が投資した額の金銭をそのまま返してもらう権利というものではありません。
投資家が有する権利というのは、分配金請求権、解約申出権、解約金請求権等権利を総合した「投資信託受益権」と呼ばれるものだという考え方があります。
しかしながら、投資信託受益権というのは明文上定められているものではなく、その内容や、誰に対して行使する権利なのか(販売会社なのか投資信託運用会社なのか)などについて争いがありました。
販売会社に対する権利なのであれば投資家に直接かかわりがありますから差押えの対象としやすそうですが、差押えの対象になりうる投資家の販売会社に対する権利というのはどのようなものか、問題があったのです。
この点について、判例の積み重ねにより、販売会社に対する解約金支払請求権を仮差押えの対象とすることができるという考え方ができてきました。
要は、投資信託を解約すると販売会社は投資信託運用会社から解約金が販売会社に交付され、その後その解約金が販売会社から投資家に対して支払われるという構造に着目した考え方です。
たしかにこのように考えれば、投資家の販売会社に対する権利を直接差し押さえることができそうです。
先日、投資信託の仮差押えを申し立てました。ただ、投資信託といっても様々なタイプのものがあり、あまりぴったりくる書式が見つからなかったので、事前に裁判所にも問い合わせてみました。
しかし結局、「申し立ててみて裁判官の判断に任せてください」と書記官もはっきりとは回答できませんでした。そこで上記のような考え方に沿うように書面を作成したところ、特に問題は指摘されず、通りました。
今後も様々な金融商品が出てくると思いますが、このようにして裁判の積み重ねで解決していくしかないのでしょうね。