相談内容

 最近、駐車場の隣地にある建物が古くなっているにもかかわらず人の出入りがなく、壁のタイルなどが剥がれかけている状態でしたが、何ら対処されないまま放置されていました。駐車場の利用者に迷惑が無いようにしたかったのですが、あくまでも隣地の建物であるため、手を出せずにいたところ、強風の日に壁のタイルが飛ばされた結果、駐車場に止めている自動車に当たってしまい、大きな傷が残ってしまいました。

 利用者の方からは、賃貸人の管理不足が原因であると指摘され、自動車の傷を修復する費用を請求されていますが、全額負担しなければならないのでしょうか。

回答

 隣地にある建物については、確かに所有権があるわけではない以上、対応することは難しいと考えがちですが、だからと言って、ご相談の事例について責任が全くないということはできません。

 法的な責任を負担するか否かは、駐車場を適切に利用できる状態で貸したか否かという観点から判断されることになります。法律上、貸す義務を適切に履行しなかった場合の責任を債務不履行責任といいますが、これは、損害が発生することが予見できたか否かということを中心に判断されることになります。
今回のご相談の事例を検討するにあたって重要な視点は、予見可能性があったか否かという点といえます。

 ご相談の事例では、賃貸人自身も駐車場の利用者に迷惑がかかるかもしれないと感じていたほどに、見た目からも古くなっていることがわかる状態になっていたうえ、人の出入りがなく、何らの対処もされることなく放置されていたとのことです。しかも、壁のタイルが剥がれかけていることも目視できる状態にありました。

 このような状態ですと、一般的には、剥がれて飛んでくることは予見することができたと考えることができるため、何らの対処も行うことなく剥がれたタイルにより自動車に損傷が生じた場合には、賃貸人が賠償責任を負担すると考えられます。
 ご相談のような状況が確認できた場合には、隣の建物を修繕する必要はありませんが、飛来物による損耗に対処するためにフェンスや防護ネットを設置するなど、利用者に損害が生じることを回避するための努力を尽くす必要があると考えられます。

 なお、平成26年11月27日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、平成27年5月26日に施行されますので、今後は、同法に基づき、市町村等に保安上危険な空家として措置を求めることも考えられます。