相談内容
当社が管理している賃貸物件に入居されている方から、騒音に関するクレームが来ており、対応に苦慮しています。
まず、101号室の方は、「上階の201号室の居住者が小さな子どものいる家庭で、上階から大きな足音や暴れる音が聞こえることを理由に、夜も眠れず精神的に苦痛なので、慰謝料を支払ってほしい」と言っています。
賃貸人の方からは、「騒音を起こしているのは賃貸人ではなく、201号室の居住者であるから、私が慰謝料を支払うのは納得がいかない」と言っています。
管理会社としては、せっかくご契約頂いた物件ですので解決してあげたいのですが、一体どうすればいいのでしょうか。
回答
201号室の方の騒音を止めさせることが最も直接的な解決であることはお分かりいただけると思われます。しかしながら、こういった近隣の騒音問題の場合は、騒音が解消されない状況が続いた結果、賃借人の方が持つ不満の矛先が賃貸人へと向いてしまい、賃貸人の方からしても、自分が騒音を出しているわけではないため譲歩する余地もなくなってしまうという状況に陥りがちです。
賃借人による慰謝料が法的に正当と認められるためには、賃貸人の債務不履行が生じていなければなりませんが、他の入居者による騒音が止まないことの一事をもって賃貸人の債務不履行とはいえません。過去の裁判例においては、賃貸人は、「賃貸物件を適切に使用させる義務」があるため、騒音を止めるべく行動する義務はあると判断しているものの、それによって必ずしも騒音が止むわけではないから、特段の事情がない限り、それ以上の義務を負担するものではないと判断されるなどしています。
そこで、賃貸人がとるべき行動としては、近隣からの聞き取り、騒音の録音、デジベル数(都道府県等が定める騒音防止に関する条例の数値などが参考となりますが、騒音というためには、少なくとも40デジベルから60デジベル程度は必要と思われます。)の計測などの調査を進めるほか、201号室の居住者に対して、騒音に関する申し出があるため騒音についての注意を促す文書を送付するなどといった行動をとる必要があります。したがって、管理会社としては、賃貸人の方がとられるべき行動を手助けし、騒音を止めるべく行動するべきでしょう。
他方で、調査の結果、騒音自体が真実ではないということが発覚することもあります。そのような場合は、賃借人の要求は明らかに不当であり、応じる必要はないということになります。賃借人に理解を求めるためには、調査結果のうち客観的なデータに基づく資料を示したうえで、騒音が確認できなかった旨報告するべきです。
以上のような行動を賃貸人として尽くしたにも拘わらず、賃借人が賃貸人への請求を止めない場合には、騒音が発生しており、それが受忍できないものであることを賃借人の側から示してもらう必要がある旨伝え、当該騒音の事実が確認できた場合には、賃貸人ではなく201号室へ騒音を止めるよう請求するべきであることを伝えるべきでしょう。