会社では、業務時間外に、たとえば従業員の研修会や、従業員のリフレッシュあるいは従業員同士の交流のための会社行事を開催することもあると思います。このような研修会や会社行事に社員が参加した場合、参加している時間が「働時間」とされ、残業代を支払う必要が生じるのでしょうか。

 「労働時間」について、判例は、「労働者が使用者の明示もしくは黙示の指揮命令ないし指揮監督の下にある時間」としています (最判平成12年3月9日民集54巻3号801頁)。

 そして、研修等への参加が時間外労働にあたるかについて、行政解釈は、「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはあたらない」としています(昭26年1月20日基収2875号)。

 研修等の「労働時間」性に関する裁判例として、大阪地判昭和58年2月14日労判405号64頁があります。当該裁判例は趣味の会(“書道”等の教養活動)の「労働時間」性を否定した一方で、経営協議会(全従業員が経営に参加する趣旨の下に設置されたもの)および研修会(自動車教習所である被告会社の教習用語の統一に関する会)の「労働時間」性を認め、割増賃金の請求の一部を認容しており、業務との関連性の薄い趣味の会と、業務との関連性が強い経営協議会及び研修会とで判断が分かれています。

 具体的に見ると、趣味の会は、福利厚生の一環としてなされていたものであること、従業員が参加するか否かは従業員の自由に委ねられ参加を強制されることもなかったこと、現に趣味の会に参加していない従業員もいたこと、会社において出欠をとっていたこともなく欠席による不利益もなかったこと等から、業務として行われたとは到底言い難いとして、「労働時間」性が否定されています。一方で、経営協議会については全従業員が参加を強制されていたこと等から「労働時間」と認定され、また、研修会については、教習用語の統一という業務に関するものであること等から「労働時間」として認定され、それぞれ割増賃金の支払が命じられています。

 研修等への参加が「労働時間」となるか否かのポイントは、自由参加が保障されているか、不参加により不利益な取り扱いがなされていないかにあると考えられます。この観点からすると、業務との関連性の薄い会社行事等についても、その参加が事実上強制されている場合には、「労働時間」と認められる可能性もあることに、注意が必要です。