保有している不動産が共有等となっている場合における法務デューデリジェンスでは、以下のような点に留意する必要があります。
まず、共有状態であるか否かは、不動産の登記事項証明書を確認すれば、容易に判明します。また、不動産登記には、共有者の登記時点における住所が記載されていますので、この記載から連絡を取ることも可能です。
共有不動産が整理できた後は、当該共有不動産をどのように利用しているのかを調査する必要があります。自社で利用している不動産であるのか、それとも賃貸物件として貸し出すのかによって、留意すべき事項が異なってきます。
自社で利用している場合には、共有者間での使用に関する合意や管理費用に関する合意の有無などを確認しておく必要があります。共有者であれば、使用に関してはいずれの共有者も自由にできるのですが、実質的に単独で利用しているような場合には、管理費用の負担が単独となるような合意が行われている可能性があります。しかしながら、共有不動産が不要となって処分しようとしても、共有者の同意なく行うことはできず、当該合意に基づく費用負担のみが残ってしまうおそれがあります。このような場合には、共有物の分割を行うことで、単独所有にしたうえで売却するということも視野に入れなければならないのですが、費用負担の合意に加えて共有物の不分割特約を締結している場合には、これも出来ないことになります。結局、自由に売却することができず、実質的には他の共有者に市場価格よりも低額で売却するほか方法がなくなってしまう場合もあり、対象会社の価値が減少するということに繋がります。
次に、賃貸物件として、貸し出す場合には、共有物件に関する賃貸借契約における制限があることに留意しなければなりません。たとえば、これから貸し出そうとする場合には、貸出期間にもよりますが、少なくとも過半数以上の同意がなければ、賃貸借契約を締結して、貸し出すことができないため、過半数以上の同意が得られるか否かによって、賃貸物件として収益性を持たすことができるか否かが左右されてしまいます。また、賃料の不払い等が発生しており、賃貸借契約を解除しなければ収益性を保てないような場合にも、賃貸借契約の解除には、過半数以上の同意が必要であり、不採算な状態にある賃貸物件を抱え込む結果になりかねません。
以上のとおり、共有不動産に関しては、特別の配慮が必要であり、確実かつ正確な調査を行っておく必要があります。