昨今の企業では若手の採用が困難になっているという事情がある一方で、ようやく若手を採用できたものの、能力が不足している、飲酒運転で他社解雇されたことがある、社長に対して挨拶しないほど態度が悪いなど、思いもよらぬ事情が採用後に発覚するということもあるようです。
そのために、多くの企業では試用期間を設けて、従業員としての適性を判断しています。では、試用期間中に上述のような事情が判明した場合に、本採用を拒否、又は解雇等することができるのでしょうか。この点、試用期間の法的性質に関して、最高裁は、会社側に解約権が留保されている労働契約であるとしています(最大判昭和48年12月12日)。解約権の行使は、採用当初知ることができなかったような「客観的に合理的な理由」が存し「社会通念上相当」として是認されうる場合にのみ許され、解約権の行使は通常の解雇よりも広い範囲においてなしうると判断しました。
では、どのような場合に解約権の行使が許されるのでしょうか。
まず、能力不足に関しては、新卒者と既卒者で判断が異なると考えられています。すなわち、既卒者で即戦力として採用された者が採用時の申告よりも能力が低かった場合などは、解約権の行使が有効と認められやすい一方で(東京地判平成13年12月25日)、新卒者等の未経験者は能力が足りないことがわかっているので、改善の見込みがあるかが解約権の行使において重視される傾向にあります。
次に、採用時の経歴詐称等ですが、解約権を行使できるのは、当該事実を知っていれば採用しなかったほどの重大な事実であることが必要となります。そのため、過去に飲酒運転で他社から解雇されたような場合には、通常ドライバー等としては採用しないと考えられるため本採用拒否等が認められる可能性が高いと考えられます。
最後に、態度が悪い等の場合ですが、社長に挨拶しない程度であれば、社会通念上相当とはいい難いものと考えられます(東京地判平成13年2月27日)。
以上のように、本採用拒否等は通常の解雇よりも認められやすい傾向にはありますが、解雇であることから慎重な判断が必要となりますので、注意が必要です。