皆様こんにちは。弁護士の菊田です。
今回は、消費者契約法(以下「法」といいます。)のうち、消費者の利益を一方的に害する条項の無効(法10条)について説明します。
法10条は、構造として、①民法等が適用される場合と比較して、消費者の権利を制限または義務を加重し、かつ、②民法1条2項の基本原則(信義誠実の原則)に反して消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする旨定めています。
①は、読めばわかるとおり、民法等の定めよりも消費者に不利益な条項であれば、この要件を満たします。法10条が適用されるための、最低条件ともいうべき要件です。
例えば、賃貸借契約における更新料条項は、民法上規定のない金銭の支払義務を負わせるものなので、この要件をみたします(もっとも、②の要件をもみたし、更新料条項が無効になるかは別問題です。)。
②の要件は、一見しただけでは何を意味しているのかわからないかもしれませんが、基本的には、消費者の利益を一方的に害するような条項であれば、該当する可能性があると考えておけばよいかと思います。同時に事業者の側の利益をも害するような条項であれば、それは消費者の利益を「一方的に」害するとはいえず、この要件をみたしません。
もっとも、消費者の利益を一方的に害するものであったとしても、直ちにこの要件をみたすわけではなく、最終的には様々な事情が考慮されて無効か有効かが判断されることになります。この様々な事情としては、メリット・デメリットの比較等は勿論のこと、当該条項がきちんとした理由のあるものか(ただ単に事業者が根拠なくお金をとるだけ等のものになっていないか)、等が考慮されます。
この条文が問題になったものとして、有名なものとしては、上述した更新料支払条項の問題があります。詳細の説明はここでは割愛しますが、最高裁はこの問題について、一義的に更新料すべてを無効とするのではなく、更新期間や更新料の額等によって無効となる可能性がある旨判示しており、ここでも様々な事情を考慮しています。
事業者の側としては、以上のような法10条の規定が存在するので、同条によって契約上の条文が無効とされ、不測の損害を被ることは避けたいところです。そのためには、契約書のひな形等を作る際に、目先の利益だけを追い求めて無茶な内容の条文を含めるようなことはせず、そのことによって法10条により当該条文が無効とされて、さらなる損害の火種になりかねないことを意識しておくべきといえましょう。