賃貸借契約では、ペットの飼育を禁止することが一般的になっており、ペットの飼育が可能な物件を探すことはなかなか難しいことがあります。借りる側からすると、自分の収入と賃料が見合うようにした結果、ペット飼育可能物件の賃料を払えない場合など、こっそりとペット飼育を行ってしまうケースがあります。
賃貸借契約において、ペットの飼育を禁止することは、原則として有効と考えられておりますが、その違反の効果については、注意が必要です。
例えば、ペット飼育禁止特約に違反しながらも、信頼関係の破壊が認められないため、契約解除の効力が認められなかった事例があります。入居当初から2匹の犬を飼育してきたとしても、汚したり損傷したりしておらず、近隣に不快感を抱かせていないうえ、独り身の賃借人にとって唯一の慰みとして特殊な感情をもっていることなどが考慮されて、信頼関係の破壊に至ったとは認められないと判断された裁判例があります。
しかしながら、多くの事例においては、信頼関係の破壊があるものとして、解除の効力が認められる傾向にあります。例えば、フェネックギツネを飼育していたので、飼育中止を申し入れたにもかかわらず飼育を継続した事案や、ペットショップを営んでいた賃借人の住居において犬及び猫を入れていた事案、多数の鳩の飼育をしていた事案などにおいては、いずれも信頼関係の破壊が肯定され、解除の効力が認められています。
実際に解除の効力が認められるためには、賃借人が賃貸物件においてペットを飼育している事実を立証しなければならないところ、賃借人の方からは、ペットを飼育しているわけではなく、友人から一度預かっただけであるとか、そもそもペットを飼っていないといった主張が出てくることが多いです。ペットの飼育を理由として契約を解除するためには、ペットの写真、鳴き声が聞こえた記録や悪臭等の発生頻度など、ペット飼育の証拠を確保していくことが重要になってきます。
また、特約に違反して、猫を飼育していた事案に置いて、室内の汚れ、キズが極めて著しい事案においては、1000万円を超える原状回復義務に基づく損害賠償が認められた事案もあります。ペットが飼育されていたか否かという事実は、原状回復費用の額にも影響してきますので、この点からもペットを飼育しているという事実の把握は非常に重要と考えられます。