皆様こんにちは。最近はいかがお過ごしでしょうか。

 私は、ここ数日とても暑くなって驚いています。毎年この季節になると、前年よりも気温が上がっているように感じます(実際のところはわかりません。)。私は今まで、愛知、京都といった「暑い」と言われている土地に住んできたので、東京の暑さくらい何てことないと思っていたのですが、結局、暑いことには変わりはないということに最近気づきました。

 さて、話は変わって、本日は、消費者契約法についてのお話しです。

 消費者契約法とは、一言で申し上げますと、消費者保護のための法律です。
 消費者と事業者の間には情報量や交渉力に差があって、消費者が不利な条件で契約を締結してしまうことが問題視されたことから施行されました。消費者契約法1条は、以下のように定めています。

(目的)
第一条 この法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほか、消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者等に対し差止請求をすることができることとすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

 私自身も、お恥ずかしい話ではありますが、学生だったころに、消費者被害で一時期話題になった某会社に危うく騙されそうになった経験があります。
 当時は法律の勉強をしていたわけでもなく、世間知らずな若造に過ぎませんでしたが、当時のことを考えると、消費者と事業者との間で、根本的な前提知識に大きな差があった典型例であったというのは、今となって改めて実感しています。

 一見、事業者の側に立ってみると、関係のない法律にも思えますが、消費者契約法に違反する契約は、無効とされる又は取り消されてしまう可能性があり、事業者が、契約当時予想もしていなかった損害を被る可能性もあります。
 そのため、むしろ事業者の側が、細心の注意を払うべき法律であるといえます。

 消費者契約法上、契約の効力に影響を及ぼしうるものとしては、大きく分けて、①契約内容を問題とするのではなく、契約締結段階における事業者の行為を原因とするもの、及び、②契約の内容自体を問題とするものがあります。

 ①については、消費者契約法4条に規定されており、事業者の消費者に対する、契約当時における説明内容等を問題としています。②については、消費者契約法8条ないし10条に規定されており、不当に、消費者に不利益を被らせるもの、あるいは事業者に利益を与えるもの等を無効とする旨定めています。

 具体例として、例えば、①であれば、見晴らしの良さをアピールしたマンションの売買契約において、事業者が、近日中に同マンションの近くに高層ビルを建てる計画があり、景色が台無しになる可能性が高いにもかからず、同計画を消費者に対し説明しなかった場合等がこれにあたります。

 ②については、少し前に話題になった、賃貸借契約における更新料条項のうち、高額すぎるもの(詳細は割愛させて頂きます。)等、消費者の側から見て、「何でこんなお金をとられるんだろう?」と疑問に思うようなお金をとる旨が契約書に書いてあると、問題になり得ます。逆に、事業者側の損害賠償責任を制限あるいは免除するような条項も、問題となり得ます。

 事業者の側としては、せっかく締結した契約を、上記のような事由を原因として取り消されてしまうあるいは無効と判断されることは避けたいところです。特に、大量の消費者と契約をするような事業であれば、最悪、消費者契約法の規定に違反して大多数の契約が無効あるいは取り消されて、会社の経営に致命傷を与える事態にも陥りかねません。

 そのため、事業者の側としては、契約締結前に、上記のような事由について、デメリットについてはしっかりと説明する、メリットについても不確定要素であれば断定的な説明はしない、等の配慮をする必要があります。また、口頭での説明のみでは、言った言わないの争いになって、紛争が泥沼化するおそれが生じるので、書面を残して、説明したという証拠を作っておく必要があります。なお、説明をどこまで尽くし、どこまで書面に残すべきか、といった点については、弁護士にご相談されることをお勧め致します。