皆様こんにちは。
 最近、冬本番といえる寒さが到来しておりますが、皆様は体調を崩さずに元気にお過ごしでしょうか。私は、年始早々に風邪をひいて寝込み、この原稿を書いている段階では病み上がりの状態です。正月でも羽目を外さずに、自制すべきだったのかもしれません…。

 さて、気分を切り替えて、ここからが本題です。

 今回は、船荷証券(Bill of Lading)についてのお話しをさせて頂こうと思います。
 企業の皆様で、外国の企業と取引をした経験のある方であれば、よくご存じの方も多いとは思います。一般的には、売買契約の際、売主から目的物が輸送されてきたときに、目的物を受領するために、運送人に交付するという形で用いられています。
 しかしながら、船荷証券は、法律的にはどのような性質のものなのか?という点については、ご存じない方もおられるのではないかと思います。
 そこで、今回は、船荷証券の法的な効力についてお話しようと思います。

 まず、売主が買主に対して目的物を輸送するときは、運送会社と運送契約を結ぶことが多いです。そして、運送契約は、荷送人である売主と運送人との間で締結される契約であり、原則として、荷受人である買主に対しては何ら権利義務を生じるものではありません。つまり、原則的には、運送人は買主に対して目的物を引き渡す義務を負うわけではありません。
 しかしながら、このような考え方を貫くと、荷受人はいざ荷物が運ばれてきても、法的には運送人に対して荷物の引渡しを請求できない等の不都合が生じ、売主が運送契約を締結した意味がなくなってしまいます。船荷証券には、この不都合性を解消する機能があります。
 船荷証券には、法律的には、大きく分けて、①債権的効力と②物権的効力があります。

① 債権的効力とは、その所持人が、運送契約上の債権の履行を運送人に対して請求できる効力です。この効力によって、船荷証券が荷送人から荷受人に対して譲渡されると、荷受人は運送人に対して、本来であれば荷送人が運送人に対して有する、目的物の損傷等に関する損害賠償請求権等の債権を行使できることになります。

② 物権的効力とは、船荷証券の引渡しが運送品自体の引渡しになるという効力です(国際海上物品運送法10条、商法575条)。運送品の所有権自体は、日本法によれば、売買契約が成立したときに移転します(民法176条)が、引渡しがされなければ、買主は、その所有権を第三者に対抗できません(同法178条)。船荷証券の引渡しは、この引渡しとしての効力を生ずるため、万が一運送人が運送品の引渡しを拒絶しても、荷受人である買主は、所有権に基づき運送品を引き渡すよう請求できます。
 なお、逆に、運送品の引渡しは、船荷証券と引き換えでないとしてもらえません(国際海上物品運送法10条、商法584条)。

 以上が、船荷証券の本来的な効力の説明になります。

 その他にも、船荷証券には、売買代金決済の場面においても効力を生じます。

 売主にとって、目的物を送った後、実際に売買代金がきちんと支払われるかは重要な関心事です。特に、国際的な取引となると、万が一支払われなかった場合、回収するのも一苦労で、回収費用の方が高額になってしまう可能性もあります。
 そこで、国際的な取引においては、信用状(Letter of Credit)というものが用いられています。詳細は割愛させて頂きますが、この信用状を用いた決済システムの中でも、船荷証券は重要な役割を担っています。
 簡単に説明すると、売主は目的物を荷積みし、船荷証券を受領した後、銀行に船荷証券を渡し、銀行から売買代金の支払を受けます。そして、この船荷証券は、買主のもとの銀行に送られ、買主は、売買代金を当該銀行に支払うことによって、船荷証券を受け取り、そのことによって目的物を受領できるようになります。信用状を用いた決済システムの中で、船荷証券はこのようにして扱われており、このことによって、売主が安心して目的物を輸送できるようになって、ひいては国際的な取引を円滑にすることの一翼を担っています。これは、前述したような船荷証券の法的効力があるからこそ実現できるシステムです。

 実際に紛争等にならない限り、具体的な法的効力まで知っておく必要はないとは思いますが、知っておいて損はありませんので、この記事が皆様にとっていいきっかけになればと思います。