ご時世なのか、経費削減やらリストラやら、あまり楽しい話題がありません。特に中小企業の皆様には、経費削減やら新規業務開拓やら資金繰りやら、日々、過酷な状況にいらっしゃるのではないかと思います。  資金繰りの話が出るとき、よく、皆様、目先の支払いや取引先に負っている債務については、色々と資金繰りを検討し悩まれていらっしゃるのですが、意外と後回しになっているなあと感じるものがあります。
 税金です。
 当たり前の話ですが、どんな会社にも必ずついてまわるものです。しかしそれが「お役所」から請求されるものである為か、資金繰りを考える際に、税金を後回しにしてしまう会社さんをよく見受けます。
 確かに税金は、払っても『当たり前』ですから、必死になって支払っても、感謝されるわけでもなければ、会社の取引先確保を保証してくれるわけでもありません。従って、資金繰りに切羽詰まっているときには、ついつい税金の支払いを後回しにしてしまおうと考えたとしても、その心情はよく理解できます。
 しかし会社を継続していくのであれば、「税金後回し」は、本当に会社にとって正しい結論なのでしょうか?
 勿論、違います。
 むしろ私としては、まず、税金から払って下さい、何がなくてもまず、税金だけは滞納しないで下さいと申し上げたいくらいです。
 なぜでしょうか。税金を滞納すると困る理由はどんなところにあるのでしょうか。
 税金を滞納すると困る理由、思いつくまま挙げると、例えば、

1.手持ち資金に詰まり借り入れ等で資金繰りしなければならなくなった時にも、税金滞納が生じていると資金を貸してくれる金融機関が極めて少なくなります。即ち、資金繰りが極めて制限されます。

2.税金を滞納していると、延滞金が付きます。滞納が1ヶ月以内であれば延滞金の利率は7.3%ですが、2ヶ月目に入ると、以後は14.6%もついてしまいます。これは、銀行の借入金利より高いものです。少しでも安い金利で資金調達しようとしているのに、借入金利よりも高い延滞金がつく税金を放っておくなんて、本末転倒ですよね。

3.しかも税金は免責されません。すなわち、遅かれ早かれ払うしか選択肢はないわけです。粘っていたら支払わなくて済むというのであれば、粘るというのも一選択ですが、どうあっても払うしかないのであれば、さっさと払ってしまうに限ります。

4.滞納しても、リスケジュールが基本的に難しい。
 金融機関からの借入金の場合には、予定通りに返済することが難しくなれば、「とりあえず利息だけ」とか、返済期間を当初の予定よりも延ばすなどといったリスケジュールが可能です。しかし税金については、「とりあえず延滞金だけ」とか、1年度をまたぐような長期の返済期間を組むといった交渉が難しいのです。
 従って、税金を滞納してしまうと、資金繰り計画を著しく圧迫することになります。

5.しかも、会社の再生中といった状況であっても、差し押さえられる資産があれば(それが営業継続に必要不可欠な資産であっても)、税務署は、容赦なく差押えをしてきます。
 民間金融機関であれば、会社再建の見通しが立ち、利息だけでも入れられていれば、少なくとも、営業継続に必要な資産を直ちに差し押さえるという「暴挙」にはなかなか出ません。
 しかし税務署は、滞納税金の処理にしか関心がありませんから、回収可能であれば、たとえそれが営業継続に必要不可欠な資産であっても、税務署は差し押さえて回収にかかります。
 必死で資金繰りをし、会社の再生に奔走していても、営業継続に不可欠な資産を差し押さえられたら、会社の存続は非常に厳しくなりますよね。

 ……思いつくままざっと挙げても、税金を滞納すべきではない理由が、すぐにこれだけ挙がります。
 つまり、会社の存続を前提にする限り、税金については、「払う」という選択肢しかあり得ないのです。それもなるべく早く。
 確かに税金を払って取引先への支払いが回らなくなったら、本末転倒な気がしなくもないでしょう。顔が見えない税務署相手に払うより、長年のお付き合いがある取引先への支払いを優先したいのも全く当然です。
 しかし会社を存続させたいと考えるなら、やはり、税金は最優先で支払った上で、資金繰りを考えていくしかありません。
 そうでないと、いくら資金繰りに奔走していても、借入金利より高い延滞金を支払わされる羽目になった上、会社再建の目途が立ったにもかかわらず、営業継続に必要な資産を差し押さえられてしまい、再建が頓挫してしまうなんてことになりかねません。

弁護士 長谷川桃