1.総論

 先日、弁護士の視点による債権回収として、債権回収の具体的な方法についてお伝えしましたが、今回は、更に進んで、債権回収案件について債務者に対する判決等を得たにもかかわらず、債務者が債務を支払ってこない場合について、ご説明したいと思います。

 どんなに難しい訴訟で勝訴したとしても、債務者に対する具体的な執行先が不明なままでは、勝訴判決を得たとしても、その判決はただの紙に過ぎないため、債務者に対する具体的な執行先の把握が重要となります。

 そこで、当弁護士法人の弁護士が執行先を把握するために、よく行っている手段をお伝えしたいと思います。とはいえ、これからお伝えする手段は、弁護士だけしかできないといったものではないため、自社によって支払督促等で勝訴判決を獲得したような場合は、その後の執行先把握手段として、是非検討してみてください。

2.インターネットからの把握

 まずは、インターネットからの把握です。インターネットから何がわかるのかと思われる方もおられると思うのですが、そのように思われた以上に使える手段です。

 現在では、多くの会社が、インターネット上で自分の会社のホームページをもっています。

 その上で、自社のメインバンクに関する情報までホームページに掲載してしまっている会社が散見されますが、このメインバンクに関する情報をホームページ上に掲載してしまっているというのが、債権回収の執行先を把握する際のポイントとなります。

 なぜかといいますと、債権執行の手段の一つである金融機関の預金口座に対する差押えを実行するためには、債務者の金融機関名及び支店名まで判明すれば足り、金融機関における具体的な口座番号までは不要とされています。

 すなわち、金融機関の預金口座に対する差押えは、○○銀行の○○支店まで判明すれば十分であって、具体的な口座番号までは不要ということになります。

 そして、先ほどご説明したように、現在では、多くの会社がメインバンク等として、お付き合いのある金融機関をインターネット上のホームページに掲載しています。中には、一つだけではなく二つ、三つと取引金融機関をホームページ上に掲載している会社も存在しています。

 そこで、当弁護士法人の弁護士は、まずはインターネット上で債権回収先の会社のホームページを探索し、その取引金融機関を把握するという作業を行っています。

 このように、インターネットのホームページ上から、その執行先を把握するといった手段も効果的ですので、是非検討してみてください。

  一方で、インターネットのホームページ上で、自社のメインバンク等について支店名を含めて紹介することは、自社の執行先を公開してしまうことになってしまうことになりかねないので、注意が必要だと思います。

3.預金元帳からの把握

 インターネット上のホームページから取引金融機関を把握できない場合、その債権回収先との間で取引があったか否かを確かめ、当該債権回収先から金融機関を通じて振り込みがあったか否かを確かめるという手段を検討することも効果的です。

 もし、債権回収先と継続的又はスポットの取引が以前にあり、当該債権回収先から金融機関を通じて振り込みがあったという場合、その振り込みがあった自社の金融機関に「預金元帳」を要求します。

 通常、通帳には振り込みを行った者の名義しか記載されていませんが、この「預金元帳」には、振り込みを行った者が、どこの金融機関の支店から振り込みを行ったかについても記載されています。

 そのため、当該債権回収先との間で以前に取引があり当該債権回収先から金融機関を通じて振り込みが行われたことがあるという場合、その振り込みを行った金融機関について支店名も含めて把握できるということになります。

 もちろん、当該振り込みを行った金融機関が債権回収先の取引金融機関ではなく、単に振り込み用に使用されたにすぎないという場合もあります。

 しかし、取引に関する振り込みについて使用する金融機関は、その会社の取引金融機関である場合が多いため、当該金融機関における口座を債権回収の執行先として把握しておく重要性は高いと思います。

4.終わりに

 相手方が任意に支払わない場合、以上のように最終的には強制執行先を探索し、強制執行を行うことになりますが、相手方が裁判に出廷してくるのであれば、一方的な勝訴判決を獲得するよりも、和解に持ち込んで、相手方の納得を得た上で、任意に支払ってもらうという手段を選択した方が、最終的な債権回収の実効性を高める傾向にあるといえます。

 そのため、債務者もしっかりとした会社であれば、訴訟提起を行った上で、一定の段階で和解に持ち込み、ある程度まとまった金額を頭金として回収し、残額を分割でも良いから支払ってもらうといった手段も有効な手段だと思います。