こんにちは。
8月も終わりに近づきましたが、いよいよ来月から、厚生労働省が過重労働重点監督月間として、いわゆる「ブラック企業」に対する立ち入りを開始します。確認事項の中には、長時間労働についても含まれているため、今回も引き続き、長時間労働と精神疾患についてお話ししたいと思います。
長時間労働と精神疾患との間の因果関係について
前回は、長時間労働と精神疾患の罹患の間に因果関係が認められる場合には、会社に、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求がなされる可能性がある点をお話しいたしました。
そこで、今回は、長時間労働と精神疾患との間の因果関係について、どのように判断されるのかについて、お話しさせていただきます。
長時間労働と精神疾患については、厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の認定基準について」と題する通達があります。
同通達によれば、精神疾患と業務の因果関係について、以下のように3つの要件を定めています。
1.対象疾病を発病していること
2.対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
3.業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発病したとは認められないこと
そして、おおむね6か月前の業務による強い心理的負荷の有無については、別表1「業務による心理的負荷評価表」という指標を採用しています。指標は「強」「中」「弱」の三段階に分かれており、「強」と認められた場合に、業務との間の因果関係があるとされています。
当該通達及び別表中には長時間労働に関する定めもあり、まず、極度の長時間労働による評価という項目があります。
同項目によれば、発病前1か月間におおむね160時間を超える時間外労働を行った場合等には、「強」評価とするとしています。
次に、長時間労働の「出来事」としての評価という項目においては、発病前2か月間に1か月あたり120時間を超える時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要するものであった場合等には、「強」評価とするとしています。
さらに、恒常的長時間労働が認められる場合の総合評価という項目においては、発病前おおむね6か月間における恒常的な労働時間として一か月100時間程度となる時間外労働がある場合には、「中」評価とし、その他別表中の「中」評価とされる出来事の後に恒常的長時間労働が行われた場合には「強」評価とされるとしています。
そのため、精神疾患については基本的に時間外労働が1か月120時間を超えるようなことが連続した場合には注意が必要であり、1か月100時間を超えるようなことが恒常化している場合にも、他の要素によっては危険な場合があるため、労働者はもちろん、経営者や管理監督者は、従業員が長時間労働についているような際には、産業医等の診断を仰がせる等の手段をとる必要があると考えられます。
弁護士 中村 圭佑