昨今、うつ病や適応障害など従業員のメンタルヘルスに関する問題が注目されていますが、今回は、東証二部に上場している運送業者に勤務していた新入社員が長時間労働等により適応障害を発症した結果、自殺に至ったところ、従業員の自殺について会社にも責任が認められるとして、会社に約6300万円の損害賠償責任が認められた事案をご紹介させていただきます(仙台地裁平成25年6月25日判決)。

 具体的な時間外労働時間数は、自殺1ヵ月前が102時間30分、自殺2ヵ月前が103時間55分、自殺3ヵ月前が129時間50分、自殺4ヵ月前が99時間50分、自殺5ヵ月前が110時間15分、自殺6ヵ月前が63時間45分となっており、恒常的な長時間労働が続いていました。なお、会社としては、休憩を取るように指導してきたと主張しましたが、裁判所は、そもそも休憩時間については業務が忙しい場合には休憩を取ること自体困難であるとして、会社側の主張を退けています。

 その上で、会社は、自殺した新入社員を過重な長時間労働に従事させる等、過度の肉体的、心理的負担を伴う勤務状態に置いていたにもかかわらず、その業務の負担や職場環境等に何らの配慮をすることなく、その長時間勤務等の状態を漫然と放置していたとして、裁判所は会社の責任を認め、約6300万円という高額の損害賠償責任を認容しています。

 メンタルヘルスとの関係では、1ヵ月平均の時間外労働が100時間を超えるような長時間労働による心理的負荷は強度と考えられています。そのため、このような長時間労働は肉体的な疾患のみならず精神的な疾患を発症させ従業員を自殺に至らしめる危険性を高めるとともに、会社も損害賠償責任を負うリスクがあることを認識する必要があります。

 加えて、長時間労働を解消するためには、単に口頭で休憩を取る旨を指導するだけでは足りず、長時間労働を実質的に解消するための組織的な体制構築が重要となります。

 社内で長時間労働が恒常的になっているのであれば、組織的な改善策を検討してみてはいかがでしょうか。