こんにちは。

 今回は現在行われている会社法改正の議論において議題の一つとなっている社外取締役について述べたいと思います。

 社外取締役という役職に馴染みのない方も多いと思われますが、これは会社法上の委員会設置会社や特別取締役設置会社にのみ設置義務規定があるため、基本的に大会社に多く見られる制度設計だからです。もっとも、東証の上場会社には社外取締役よりもさらに厳しい「独立取締役」等の設置義務がありますので、今後上場を目指す企業においては、どのような制度か理解しておくべき制度であると思われます。

 社外取締役とは、会社の取締役であって、①現在、その会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなく、かつ、②過去に、その会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなかったものをいいます。

 社外取締役を設置することのメリットとしては、いわゆる「所有と経営の分離」をさらに進めた「経営と執行の分離」を強化し、コーポレートガバナンスを充実できる点にあります。すなわち、社外取締役を導入することにより、経営と職務執行者が同一であるような状況ではなく、経営の意思決定と現実の会社の業務の執行を分離することによりコンパクトで円滑な会社運営を可能にすると同時に、社外の者という公正さをもってより客観的に経営の意思決定をできるというメリットがあります。あるいは、外部の知見を経営に取り入れられるという点もメリットとして挙げられます。

 一方で、デメリットとしては、効果が一見して不透明である可能性が高い点が挙げられます。社外取締役はあくまでも社外の目による公正かつ客観的な経営監視が主なメリットですから、社外取締役を導入したから業績が上がるという単純な関係には必ずしもありません。また、導入によりどの程度の市場評価が得られるかという観点からしても、導入したから株価が上がるという関係には必ずしもないという米国の一研究結果も存在します。そのため、社外取締役導入のコストが、経営監視にかかっている点を十分に理解しないと、満足な結果が得られないかもしれません。

 また、メリットデメリットとは別に、現在の日本においては、社外取締役の人材が不足しているという問題があります。適切、適法な会社経営を監督するという社外取締役の役割からすれば、現役としてバリバリ活躍する経営者よりは、引退後の経営者、学者、あるいは我々弁護士等を導入することになりますが、まだまだ人材としては不足しているのが現状です。

弁護士 中村 圭佑