平成24年8月10日、「労働契約法の一部を改正する法律」が公布され、有期労働契約について、新しいルールが3つ加わりました(それらのうち、下記①及び③の規定については、平成25年4月1日から施行されます。)。

 今回の法改正のテーマを一言で表現するならば、それは「雇止めの不安の解消」ということになるでしょう。
 有期労働契約とは、いわゆるパート社員や派遣社員にみられるような、正社員以外の形態での労働契約です。現在、有期労働契約の形態で労働している人は日本全国で約1200万人にも及ぶと言われ、いわゆる雇止めや濫用的な有期労働契約形態の使用が社会問題化しています。
 このような現状を背景として、労働者が安心して働くことのできる社会の実現を目指し、今回の法改正が行われました。

 今回の法改正の概要は、以下のとおりです。

① 無期労働契約への転換(第18条)

 有期労働契約が複数回更新されて、その通算期間が5年を超えたときは、労働者の申込みによって、有期労働契約を無期労働契約(正社員のような期間の定めのない労働契約)に転換することができます。

② 最高裁判例で認められた「雇止め法理」の明文化(第19条)

 最高裁判例によって確立されていた「雇止め法理」が、明文で認められることになりました。すなわち、有期労働契約のうち、(1)反復更新され、その雇止めが社会通念上解雇と同視できるもの、(2)有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるものを対象として、一定の場合に、使用者による当該有期労働契約の雇止めが認められなくなりました。

③ 不合理な労働条件の禁止(第20条)

 無期労働契約と有期労働契約との間で、不合理な労働条件の相違を設けることは禁止されます。

 上記②のルールについては、上述のように既に判例法理で確立していたものですので、それほど大きな影響はないかもしれません。

 しかし、上記①及び③のルールに関して言えば、企業は、これまで有期労働契約社員を充てていた業務についての対応や、有期労働契約社員と無期労働契約社員の労働条件の相違(両者間には各種手当等について待遇の差があることが通常であると思われます)の合理性の検討に迫られることになるでしょう。

弁護士 細田大貴