こんにちは。
 今回は、賃貸借契約が法定更新された場合にも、更新料特約が適用されるか否かについてお話ししようと思います。

 更新料は、その名のとおり、賃貸借契約の期間が満了し、契約を更新する際に、賃借人から賃貸人に支払われるものです。

 更新の種類としては、当事者間更新契約書や覚書を取り交わす合意更新と、かかる合意がなされないうちに契約期間が経過し、借地借家法の規定に基づき契約が更新される法定更新とがあります。
 そして、更新料は、本来、当事者間で更新の合意をしたうえで支払われるものであることからすれば、更新料特約は、合意更新の場合を想定しているものと考えられます。
 そのため、合意なくして更新される法定更新の場合にも、更新料特約が適用されるかが問題となります。

 この問題について、裁判所の判断は分かれています。

 東京地判平成9年6月5日は、契約期間満了後、契約が継続する点では合意更新か法定更新とで異ならないこと、「本契約更新の際、賃借人は賃貸人に対し、更新料として新賃料の4か月分相当額を支払うものとし、賃料については当事者協議のうえ決定するものとする。」という契約文言上、合意更新の場合に限定するとまでは読み取れないことなどを理由に、法定更新にも適用されると判断しました。

 一方、東京地判平成9年1月28日は、「本契約は、賃貸人と賃借人の協議により更新することができる。更新する場合、賃借人は、更新料として新家賃の2カ月分を賃貸人に支払うものとする。」という文言の解釈として、法定更新は念頭に置かれていないこと、法定更新の場合には契約の期間の定めがなくなり賃借人の地位が危うくなるが、合意更新の場合には一定期間契約を存続させることができ、更新料はそれに対する対価としての意味も持つことなどを理由に、法定更新への適用を否定しました。

 このように、法定更新の場合、当然に更新料を請求できるというわけではなく、賃貸借契約上の文言解釈等によって判断されることになります。  特に、上記東京地判平成9年1月28日にあるとおり、更新料が合意更新の場合だけを想定していると解釈しうる場合、更新料請求の棄却リスクが高まりますので、賃貸人・管理会社は注意を要すると言えるでしょう。