皆様こんにちは。弁護士の菊田です。

 本日は、国際的な労働契約の準拠法に関するお話しをしようと思います。
 近年は、日本国内で中国人やブラジル人の労働者数が増加しているので、これらの労働者との間の労働契約について、どの国の法律が適用されるかは、契約の前に検討しておくべき事項です。
 なお、以下のお話しは、日本の裁判所に訴訟等が提起された場合のお話であり、外国の裁判所で訴訟等が提起された場合には、また異なった判断がなされうることにご注意下さい。

 そして、労働契約については、当事者間の合意によって定められた国の法律が適用されるのが原則です(法の適用に関する通則法7条)。そのため、当該労働契約の契約書において準拠法を日本法と定めておけば、特に問題は生じないようにみえます。

 しかし、①当該労働契約に最も密接な関係のある地の法が合意によって定められた準拠法と異なり、かつ、②労働者が最も密接な関係のある地の法の中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対して表示したときには、その強行規定の適用を受けます(同法12条1項)。なお、強行法規とは、当事者の合意をもってしてもその適用を排除することのできない法規です。日本法であれば、労働基準法等がこれに該当します。
 そして、ここでは、労務を提供すべき地の法が最も密接な関係のある地の法と推定されます(同法12条2項)。

 これはどういうケースで問題になりうるかというと、例えば、外国に工場等を有していて、当該外国で現地の人を雇用するようなケースです。この場合は、労働契約において準拠法を日本法とする旨を合意していても、労務提供地である当該外国の法が最も密接な関係のある地の法と推定され、当該外国の強行法規、すなわち日本法でいう労働基準法にあたるような法律が適用されてしまう可能性が生じます。そのため、このようなケースであれば、当該外国の労働基準法等の強行法規の調査をしておくことが必要になります。

 皆様も、外国人の方と労働契約を締結されるときは、以上のような点にご注意下さい。