こんにちは。前回は、セクハラ防止のために、企業が取るべき措置についてお話ししましたが、今回は、セクハラに関して企業に不法行為の成立が認められた事案を紹介したいと思います。
事案は、勤務時間中に、男子従業員がのぞき見目的で、会社の営業所の女子トイレ内の掃除道具置き場に侵入しているのを発見した女子従業員が、上司に対して事実を報告し、早急に措置をとるように要求したにも関わらず、会社は真偽を確認せず、報告した女子従業員に対して、警察や社外に口外しないように要請していたというものです。
判決は、会社には、雇用契約上、従業員に対し、労務の提供に関して良好な職場環境の維持確保に配慮すべき義務を負い、職場においてセクハラ等従業員の職場環境を侵害する事件が発生した場合、誠実かつ適切な事後措置をとり、その事案にかかる事実関係を迅速かつ正確に調査すること及び事案に誠実かつ適正に対処する義務を負っているというべきであるとし、会社の責任を認めました。
セクハラ対策では、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」において、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発や職場におけるセクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応等9項目が定められています。
セクハラについては、双方の言い分が異なり、真っ向から対立することも少なくありません。また、加害者、被害者双方の名誉・プライバシーに関わる問題であるため、会社としても対応に苦慮することも多いと思われます。
したがって、事後の対応で会社に不法行為が認められるのは、事例のように、不公平な対応をしたり、隠ぺいしたり故意に放置するなど、会社の対応が悪質である場合に限定されるべきではないかと考えます。