こんにちは。4月も下旬に入りました。4月に入社された新入社員の方々も、そろそろ、職場に馴染んできたころでしょうか。

 大多数の企業では、入社後一定期間を試用期間と定めていることが多く、この期間中は「社員として不適格と認めたときは解雇できる」などと就業規則で定められていることが通常です。

 判例は、試用期間の定めがある労働契約も期間の定めのない通常の労働契約であると捉え、試用期間中は使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が大幅に留保されていると考えています。
 このような判例の立場からは、企業は新入社員に対し、試用期間中においては留保している解約権を行使できることになります。

 では、いかなる場合に企業は留保している解約権を行使できるのでしょうか。

 著名な判例である三菱樹脂事件判決(最判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)、試用期間における解約権の留保は、採否決定の当初においては、社員としての適格性の有無に関する事項につき、資料を十分に収集することができないことから、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨でされるものと解し、そのため、留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきとしています。

 しかし、同判決は法律が解雇権を制限している趣旨等から、留保解約権の行使は解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合に許されると述べています。

 本判決においては、留保解約権の行使は通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきとしていますが、むしろ、留保解約権の行使は「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当と是認されうる場合」に許されるという判断に重点があり、本判決以後の多くの裁判例では、具体的判断の際に、本採用拒否事由の正当性を厳しく判断する傾向があります。