こんにちは。本日は、誰が著作権の侵害者と判断されるかについてお話しします。
基本的には、著作物を著作者の許諾なく複製(著作権法21条)したり、公衆送信(同23条)したり、翻案(同27条)したりした人自身が、著作権の侵害者となります。しかし、著作物の利用方法はさまざまですし、著作物を利用した人自身しか侵害者として扱えないとなれば著作権の保護が不十分になります。
そこでかなり前から論じられてきた理論に、カラオケ法理というものがあります。カラオケ法理というのは、簡単にいえば、カラオケ装置を設置しているスナックなどで、カラオケを歌うのは客だとしても、そのカラオケ装置を支配管理しているのは店舗であって、カラオケによって経済的利益を得ているのも店舗なのだから、店舗が演奏権の侵害主体となるという理屈です。つまり、著作権侵害の手段を支配管理しているのは誰か、経済的利益を得ているのは誰か、という2つの観点から著作権侵害の主体を判断するという理論です。
カラオケ法理は、あらゆる判例において採用されてきた理論ですが、平成23年に、2件(まねきTV事件、ロクラクⅡ事件)、下級審ではカラオケ法理が採用されながら、最高裁では異なる判断がされた判決が出ました。
2件とも、個人利用者が番組送受信用のパソコンにおいてテレビ番組放送波を受信し、自己の専用モニター又はパソコンから視聴したい放送を選択し、番組送受信用のパソコンにおいてデジタルデータ化した放送データをモニター又はパソコン等に対し送信するにあたり、番組送受信用のパソコンを預かり管理するというサービスが著作権違反となるかが問題となったものでした。そもそも個人利用者が個人の利用目的で著作物を利用する行為は著作権違反とならないからです(同30条)。
これも著作物の利用者(個人)と経済的利益を得たり装置を管理している主体(サービス提供者)が異なるケースですので、カラオケ法理が前提としている事実関係に似ています。しかし、これら2件の最高裁とも、送信や複製の前段階としての情報の入力に関与する行為をしているサービス提供者を、送信可能化、自動公衆送信、複製等の行為主体として判断しました。これらの判例においては、サービス提供者が情報を入力しているから、サービス提供者が自動公衆送信を行っていると判断されたり(まねきTV事件)、社会的、経済的側面を総合的に判断してサービス提供者が自動公衆送信装置により複製等をし著作物を利用していると判断されたりしました(ロクラクⅡ事件)。
結局2件において、サービス提供者が著作権侵害の主体だと判断され、デジタル時代に著作権秩序を肯定しようとしたものとも評価されています。