こんにちは。もうすぐ春ですね。春はお別れの季節、ということで、今回は退職届についてお話ししたいと思います。
労働契約の終了原因は、大きく分けて、解雇と退職があります。使用者の一方的意思表示により終了するものを解雇といい、解雇以外の終了事由を退職といいます。さらに、退職は自主退職(辞職)、合意退職、当然退職に分けられます。
自主退職は(辞職)は、労働者が一方的に行う労働契約の解消をいいます(民法627条)。
合意退職は、労働契約の終了を使用者と労働者が合意して行う場合をいいます。
そこで、「退職届」、「辞職」または「依願退職」と書いた封筒を上司の机にそっと置いた場合は自主退職か合意退職の申し込みになります(一般的に、「辞職」は自主退職を、「依願退職」は合意退職を指すことが多いようですが。)。
では、一度出した封筒を、労働者はいつまで撤回できるのでしょうか。
自主退職の場合、労働者の一方的な意思表示によって成立するので、退職の意思表示が会社に到達した時点で効力を生じ、撤回できないことになります。ですから、労働者は、「退職届」等の封筒を上司の目に触れる前にそっと回収できければ退職ということになります。回収できなかった場合でも、退職の意思表示を民法の規定により、詐欺や強迫で取り消す、又は錯誤で無効であると主張することは出来ますが、実際に民法の規定が適用される場合はほとんどないと思われます。
次に、合意退職の場合は、会社が承諾するまで撤回できます。そして、会社の承諾は、承諾する権利のある者によってなされる必要があります。会社は承諾権者を定めることができますが、かかる定めがない場合、労働者の地位を喪失させ、会社の構成員の範囲を決定するという重要な事項に関わることなので、承諾権者は限定的に解するべきでしょう。裁判例でも、常務取締役観光部長に退職承認の権限がなかったと判断された事例が参考になると思われます。(岡山地判平3.11.19)。ですから、上司が退職届を受け取った場合、その上司が社長や人事担当部長であれば撤回は難しいですが、営業部長ならば撤回できる可能性が高いと言えます(もちろん、営業部長が社長に退職届を持っていき、社長の了承を得た後は撤回できません。)。
会社としては、後の紛争を予防するため、退職希望者に退職届受理承認書へのサインを求めることをしてもよいでしょう。
ちなみに、当然退職は期日が到来したことをもって労働契約が終了するものをいい、定年や死亡した場合が当たります。