現在、為替オプション取引(通貨オプション取引)による被害をこうむった被害者を救済しようとする社会的機運が高まっているように感じます。
 今回は、以下の裁判例を紹介しようと思います。

 被告従業員らの勧誘により豪ドルの通貨オプション取引を行っていた原告が、被告に対し、適合性原則違反、公序良俗違反、説明義務違反、虚偽説明、担保契約違反の違法があったとして、原告が通貨オプション取引により被った損害の賠償を求めた事件について、原告が被った損害7631万円7600万円のうち、被告に対し、その損害の3割に当たる、金2517万5280円の賠償の支払いを命じた判決がなされた(大阪地方裁判所平成23年10月12日判決)。
 原告は、腕時計塔の輸入、国内卸等を業とする株式会社であり、資本金5000万円、売り上げ高約18億、従業員30名程度であり、主に、ヨーロッパの企業から輸入しており、オーストラリアの企業との取引はない。
 被告は、「日興コーディアル証券株式会社」から「シティグループ・オーバーシーズ・ホールディングス株式会社」に商号変更した金融商品取引業を主たる業とする株式会社である。
 本件の通貨オプション取引の内容は、行使価格を89.20円とし、10万豪ドル分のコール・オプション(購入権)を原告が被告から買い、30万豪ドル分のプット・オプション(売却権)を原告が被告に売る、との内容のものであった。

 本判決において、裁判所は、適合性原則違反、公序良俗違反、虚偽説明、担保契約違反等については、本件具体的事情に照らしてその違反性について否定したが、被告従業員らの勧誘における本件取引の説明に際し、以下のとおり、本件取引の担保に関し説明義務違反があったことを理由として、被告の過失を認め被告に対し賠償を命じたのである。
 すなわち、本件取引において、差し入れる担保は通貨オプション取引が終了するか、豪ドル相場が回復して担保返戻余力が生じるまでの間は、原告はこれを自由に使用することができない。そのため、運転資金として使用する資産が減少するのであるから、顧客にとって担保に関する事項は重大であり、また、予測に反する為替変動がした場合に、追加担保を差し入れることができなければ、強制決済になるというリスクがあることからすると、担保がどのような場合にいくら必要となるかは、顧客が通貨オプション取引を行うか否かを決定する際に重要な考慮要素となる。
 また、本件において、原告は被告の勧誘に際し担保が必要になることについて、当初取引締結に際し難色を示しており、担保に関して強い関心を示していた。
 しかしながら、被告は原告に対し、本件通貨オプション取引を勧誘するに際し、相場の下落リスクや追加担保について抽象的な説明を行ったのみであり、どの程度豪ドル相場が下落すればいくらくらいの追加担保が発生する等の具体的な説明を何ら行っていなかった。
 この点が、被告において、変動要素等を挙げて担保に関するリスク等をわかりやすく説明することが十分可能であったのにもかかわらず、原告に対する説明義務違反であるとして、被告の過失を認めたのである。

 本件において、原告が通貨オプション取引について一定の知識があったこと、被告から一定の説明をうけ、自己の意思に基づき取引を行っていたこと等から、過失があるものとされたが、その過失割合は7割とされ、上記のとおり、原告に対し、2517万5280円もの賠償を命じる判決がなされたのである。

 

 通貨オプション取引について、金融機関の強引な勧誘にのってしまい、損害が拡大している個人及び事業者の方は数多くいらっしゃるものと思います。
 上記のとおり、為替オプション取引(通貨オプション取引)による損害について、顧客である個人及び事業者を救済する社会的機運が高まっています。
 心当たりのある方は、是非弁護士にご相談又は当社実施のセミナーにご参加いただきたいと思います。