(2)事例「Aの悲劇」
Aは、株式会社弁護士法人ALG商事の若手社員であるところ、平成24年1月18日、居酒屋Bで行われた会社の新年会に出席し、持ち前の話術で自らの失敗談や失恋話などをネタにして同僚や上司のウケを取り、場を盛り上げた。そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ、新年会はお開きの時間を迎えた。
Aは気分良く二次会の店へ向かおうとしたところ、Bが設置した靴箱に預けたはずの革靴がなくなっていた。Aは慌ててBの従業員に説明を求めたところ、Bの従業員の説明によると、なんとAらの直前に退店した団体客の中の誰かが間違えてAの革靴を履いて帰ってしまった、とのことであった。
Aのひょうきんなキャラクターに加え、数分前まで面白おかしい話をしていたAの革靴が他の客に履いて帰られた話を聞いたAの上司や同僚は大ウケしたが、Aは買ったばかりで履きやすくお気に入りだった革靴を間違えて履いて帰られたうえ、Bが準備したトイレスリッパで移動せざるを得なくなった事態にショックを受け、すっかり酔いもさめてしまった。
初めのうちはこれもネタの一つにでもなるだろうと前向きに考えようと努めていたが、スーツにトイレスリッパという情けない恰好で夜風に吹かれながら歩いているうちに、通行人の視線がすべて自分の足元に注がれている気がしてきて、だんだんと恥ずかしくなり、腹が立ってきて、漠然としてではあるが、Bに対して法的な責任を求めることができないか、と考えるに至った。
そこで、Aは、友人の紹介を介して甲山一郎弁護士の事務所へ相談に訪れた。