貴重品として預けていた財布の中のキャッシュカードが盗まれ、預金が引き出された場合、預かっていた者は引き出された金額について損害賠償義務を負うのでしょうか。今回は、スポーツクラブの会員施設利用契約に基づく業務上の安全管理義務違反についてお話ししたいと思います。

 事案の内容としては、以下のようなものでした。

 Xは、Yの経営するスポーツクラブの会員であったところ、スポーツクラブのサウナを利用する間、キャッシュカード3枚、現金、運転免許証等の入った財布を、暗証番号式の貴重品ボックスに入れました(暗証番号は、Xが任意に決定できるもので、キャッシュカードの暗証番号と同じでした。)。Xが退館しようとしたところ、財布はあったものの、財布の中の3枚のキャッシュカードが盗まれていました。Xはすぐに各金融機関に支払い停止を申し出ましたが、既に何者かによって引き出された後であり、合計約550万円が払い戻されていました。そこで、Xは、Yに対し、債務不履行に基づき、キャッシュカードで払い戻された約550万円の損害賠償請求訴訟を提起しました。

 この損害賠償請求訴訟で、東京地裁八王子支部平成17年5月19日判決は、以下のとおり判断しました。

 まず、XとYとは会員施設利用契約があり、この契約に基づき、Yは貴良品ボックスの管理者として、預け入れられた貴重品が盗難にあうことがないように、これを安全に管理すべき業務上の注意義務を負うとしました。そして、過去にYの別の支店で同様の同じ手口の犯行が行われたにもかかわらず、その対策が十分講じられていなかったことを認め、Yに会員施設利用契約に基づく業務上の安全管理義務を怠った注意義務違反があると認めました。

 さらに、施設利用規約に定められていた免責特約についても、Yに盗難防止措置を取らなかったという過失があり、免責事由に当たらないと判断して、Yの損害賠償責任を免れることはないとしています。

 また、Yの注意義務違反とXの損害との因果関係についても、Xの損害がYの債務不履行によって通常生ずることが予想されると判断して、Yに損害賠償責任を認めています。

 ただし、Xが容易に推測できる暗証番号を用いた点に過失があるとして、Xに3割の過失割合を認めました。