最近、会社間で取引を行う場合に、相手方に反社会的勢力でないことを表明する誓約書を差し入れさせたり、契約書に反社会的勢力排除条項を定めたりすることが多くみられます。これは言うまでもなく、暴力団等の反社会的勢力と会社との関係を遮断して反社会的勢力の資金を断ち、反社会的勢力を根絶しようという目的のもと行われているものです。
金融機関については、政府指針や金融庁の監督指針に沿って全国銀行協会が暴力団排除条項の参考例を公表する等、早いうちから反社会的勢力との関係遮断の取り組みが行われていますが、事業会社においても、反社会的勢力とのつながりがあることが明らかになると、会社のイメージに深刻な影響があるため、特に、継続的取引を行う会社との契約書には反社会的勢力排除条項を入れることが多くなっているようです。
反社会的勢力排除条項を定める場合は、以下の条項を置くことが一般的です。
① 自社が反社会的勢力ではなく、反社会的勢力との取引もしていないことを表明する条項
② 自社が反社会的勢力であることが判明した場合契約解除できることを定める条項
このような条項は、契約解除の法的根拠となるだけでなく、反社会的勢力との取引を予防したり、他の取引先に対して自社の反社会的勢力排除の取り組みをアピールしたりできるという効果もあります。
反社会的勢力と一旦取引を始めてしまうと、最初はそれとは知らずに取引を開始した場合であっても、あとから関係を断ちきるのは大変だということは想像に難くありません。ですので、取引開始の時点で誓約書を差し入れさせたり、契約書に反社会的勢力排除条項を定めたりすることで予防線を張っておくことの有用性は大きいでしょう。
とはいえ、契約書なら何でも反社会的勢力排除条項を入れることが適切なのでしょうか。たとえば、秘密保持契約に反社会的勢力排除条項を入れて、秘密保持義務を負う当事者に反社会的勢力でないことの表明をさせ、もし反社会的勢力だったら契約解除できるとしてしまうと、もしその相手方が本当に反社会的勢力であった場合、契約を解除すると結局相手方が秘密保持義務を負わなくていいことになってしまいます。具体的ケースにもよるとは思いますが、秘密保持契約にまで反社会的勢力排除条項を入れる必要はないという場合が多いのではないでしょうか。
要するに、反社会的勢力排除条項は、そもそも反社会的勢力との関係を遮断して反社会的勢力の資金を断ち、反社会的勢力を根絶するという目的の条項であって、これを入れるかどうかも目的に照らして個別に判断すべきものだと考えられます。
弁護士 堀真知子