こんにちは。
労災保険について、前回に引き続き、労災保険法の適用を受ける「労働者」性について、お話したいと思います。
労基法9条にいう「労働者」は(1)使用従属性に関する基準、(2)「労働者性」の判断を補強する要素の2つの判断要素が指標として考慮されるべきであるとされています。
そして、前回お話した(1)の使用従属性の有無について、判断が難しい場合、以下のような要素を勘案して、総合的に労働者性が判断されることになります。
① 事業者性の有無
たとえば、労働者は、業務に必要な機械、器具等を所有していないのが通常であると考えられます。そのため、業務に必要な機械、器具などを本人が所有しており、それらが著しく高価な場合には、自己の計算と危険の下で業務を行う事業者としての性格が強く、労働者性を弱めると考えられています。
また、報酬について、その会社で正社員として働いている従業員と比較して、著しく高額な報酬額を得ているような場合にも、労務提供に対する賃金ではなく、事業者に対する代金の支払いと認められ、事業性が強まると考えられます。
さらに、裁判例では、業務遂行上の損害について責任を負う場合や、独自の商号使用が認められていることを、事業者性を強める要素としているものがあります。
② 専属性の程度
他社の業務に従事することが規則上、契約上、または、時間的に余裕がない為事実上困難であるような場合、専属性の程度が高く、経済的にその会社に従属しているとして、労働者性が補強されると考えられます。
また、報酬に固定部分があったり、事実上固定給となっていたりする上、その額も生計を維持しうる程度であるなど、報酬に生活保障的な要素が強く認められる場合には、労働者性が補強されると考えられています。
③ その他
上記の要素に加えて、採用過程が正社員の採用と近似していること、給与所得として源泉徴収を行っていること、服務規律を適用していることなどが、労働者性の補強要素になり得ます。
これまでお話しした判断基準で労働者性が認められた場合には、割増賃金や保険料(健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険)の支払義務が生じるリスクが生じます。また、契約終了時においても、解雇権濫用法理が適用または類推適用され、契約の途中解消が客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当として是認することができないとして、権利の濫用とされるリスクがあるといえます。